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法令改正最前線(第82回 『カスハラ法制化施行に向けて』)

<滝 則茂 氏>

今回は、カスタマーハラスメント対策の法制化施行に向けての動きとして、いわゆるカスハラ指針の素案(2025年11月17日 厚生労働省公表)について、紹介します。

1 カスハラ対策の法制化
カスハラ対策の法制化については、労働施策総合推進法の中に事業主の措置義務規定が新設されることになり、2025年の通常国会で法改正が成立しました。施行期日は、法律の公布日(2025年6月11日)から1年6か月以内の政令で定める日とされましたが、2026年10月1日からの施行が有力視されています。

ハラスメント対策は、労務管理における重要施策の一つといえますので、企業の対応が円滑かつ実効的に行えるよう、厚生労働大臣が指針を策定し、周知に力を注いでいます。カスハラ対策に関し、改正後の労総法33条4項は、厚生労働大臣に「事業主が講ずべき措置等に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針」を策定する義務を課しています。このたび、労働政策審議会雇用環境・均等部会に厚生労働省が「職場におけるカスタマーハラスメントに関して雇用管理上講ずべき措置等に関する指針の素案」を提出し、公表したことにより、企業の対応が本格化されることが期待されます。

2 素案のポイント
以下、今回公表された指針の素案につき、特に重要だと思われるポイントを紹介します。

◎職場におけるカスタマーハラスメントの定義
「職場において行われる①顧客等の言動であって、②その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるもの」とされています。
このような言動であれば、店舗や施設等において対面で行われるもののみならず、電話やSNS等を用いて行われるものも含まれます。また、「顧客等」には、例えば、以下の者等が含まれます。

・事業主が販売する商品の購入やサービスの利用をする者
・事業主が掲載している広告の内容等に関し問い合わせをする者
・取引先の担当者
・企業間での契約締結に向けた交渉を行う際の担当者
・施設の利用者及びその家族

◎事業主が雇用管理上講ずべき措置の内容
(1)事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
・職場におけるカスタマーハラスメント(以下、「カスタマーハラスメント」とします)には毅然とした態度で対応し、労働者を保護する旨の方針を明確化し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること
・カスタマーハラスメントの内容及びあらかじめ定めたカスタマーハラスメントへの対処の内容を、管理監督者を含む労働者に周知すること

(2)相談(苦情を含む。以下同じ)、適切に対応するために必要な体制の整備
・相談への対応のための窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること
・相談窓口の担当者が、相談に対し、その内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること

(3)カスタマーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
・事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認すること
・カスタマーハラスメントが生じた事実が確認できた場合は、被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと
・改めてカスタマーハラスメントに関する方針を周知・啓発し、必要な場合には再発防止に向けた措置を講ずること

(4)カスタマーハラスメントへの対応の実効性を確保するために必要なその抑止のための措置
労働者に対し過度な要求を繰り返すなど特に悪質なものへの対処の方針をあらかじめ定め、管理監督者を含む労働者に周知するとともに、当該方針で定めた対処を行うことができる体制を整備すること

(5)(1)~(4)までの措置と併せて講ずべき措置
・相談への対応、カスタマーハラスメントの事後対応に当たっては、相談者等のプライバシー保護に必要な措置を講じ、その旨を労働者に周知すること
・労働者がカスタマーハラスメントの相談等を理由として、解雇その他不利益な取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること

社会保険労務士法人LEC
特定社会保険労務士 滝 則茂 氏

中小企業福祉事業団幹事 名古屋市生まれ。中央大学法学部法律学科卒業。1989年社会保険労務士登録。2006年特定社会保険労務士付記。

長年にわたり、LEC東京リーガルマインド専任講師として、企業研修、職業訓練、資格取得講座などの企画、教材開発、講義を担当。2003年4月より、社会保険労務士法人LECにて、労務相談、就業規則関連業務などに従事する一方、社労士向けセミナーの講師として活躍中。

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