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法令改正最前線(第69回 『今後の仕事と育児・介護の両立支援に関する研究会報告書』)

<滝 則茂 氏>

今回は、6月19日に厚生労働省から公表された「今後の仕事と育児・介護の両立支援に関する研究会報告書」について紹介します。

1.報告書が登場した経緯
厚生労働省は、平成28年・29年の育児・介護休業法改正法の施行から5年が経過し、施行状況につき検討を加える必要が出てきたこと等を踏まえ、「仕事と育児・介護の両立支援制度等について、現状分析や論点整理を行い、今後の在り方を検討する」ため、学識経験者による「今後の育児・介護の両立支援に関する研究会」を立ち上げました。この研究会は、本年1月26日から6月12日まで計9回にわたって開催され、その成果を取りまとめた報告書が6月19日に公表されています。

2.報告書のポイント
本報告書では、事業主等関係者からのヒアリングを踏まえた現状分析を行った上で、法改正につながる「具体的な対応方針」が示されています。この対応方針は、6つ項目に整理されています。以下、それぞれの項目と、報告書において提言されている施策の具体例を紹介します。

①子の年齢に応じた両立支援に対するニーズへの対応
・子が3歳になるまでの両立支援策として、テレワークを事業主の努力義務と位置付ける。
・子の看護休暇制度につき、目的を見直し(子の行事等の場合にも使えるようにする)、「看護休暇」という名称の在り方も検討していく。
②仕事と育児の両立支援制度の活用促進
・男性の育児休業取得状況の公表について、対象となる事業主の範囲を常用労働者数1,000人超規模から300人超規模へと拡げる。
③次世代育成支援に向けた仕事環境の整備
・次世代育成支援対策推進法(令和7年3月で失効予定)を延長する一方、一般事業主行計画に盛り込むべき事項を拡充する。
④介護離職を防止するための仕事と介護の両立支援制度の周知の強化等
・家族の介護の必要性に直面した労働者に対し、事業主が、仕事と介護の両立支援制度等に関する情報を個別に周知ことを義務付ける。
⑤障害児等を育てる親等、個別のニーズに配慮した両立支援について
・子に障害がある場合や医療的ケアを必要とする場合にも、子が要介護状態の要件を満たせば、親が介護休暇等の制度を利用できるようにする。
⑥仕事と育児・介護との両立支援に当たって必要な環境整備
・プライバシー保護の観点から、妊娠・出産等や家族の介護に関する情報が適切に管理されるよう、社内で共有する範囲を定めるといった配慮を事業主に求める。

3.今後の見通し
法改正がらみの案件ですので、労働政策審議会で審議を行った上で、法改正事項として必要度の高いものについては、次回の育児・介護休業法等の改正法案に盛り込まれることになると思われます。早ければ、来年の通常国会に間に合うかもしれませんが、施行までには相応の周知期間が必要となりますので、施行は令和7年度以降になるものと予測できます。

社会保険労務士法人LEC代表社員
特定社会保険労務士 滝 則茂 氏

中小企業福祉事業団幹事。東京都福祉サービス第三者評価評価者。
名古屋市生まれ。中央大学法学部法律学科卒業。1989年社会保険労務士登録。2007年特定社会保険労務士付記。東京リーガルマインド主任研究員として、企業研修、職業訓練、資格取得講座などの企画、教材開発、講義を担当。2003年4月より、社会保険労務士法人LECにて、労務相談、就業規則関連業務などに従事する一方、社労士向けセミナーの講師として活躍中。

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