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法令改正最前線(第63回『トラック運転者の「改善基準告示」の見直し』)

<滝 則茂 氏>

今回は、9月8日に厚生労働省から公表された「貨物自動車運送事業に従事する自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(「改善基準告示」)の在り方についての報告(案)について、その経緯と重要ポイントを紹介することにします。この業界では、拘束時間や休息時間(勤務間インターバル)の考え方が制度化されるなど、他の業界にも参考となる制度が、従前から取り入れられています。

1.これまでの経緯
自動車運転者の労働時間等の規制については、平成元年以降「改善基準告示」により、拘束時間、休息時間等について上限基準等が設けられ、その遵守が図られてきました。この告示は、平成9年に改正が行われて以降、実質的な改正は行われていませんでしたが、脳・心臓疾患による労災認定基準の改正など、この間に社会環境は大きく変化しています。また、平成30年に成立した「働き方改革関連法」では、自動車運転者について、令和6年4月以降、時間外労働の限度時間(月45時間・年360時間)及び臨時的特別な事情がある場合の年960時間の上限時間が適用されることとなっています。さらに、働き方改革関連法の国会附帯決議では、過労死等防止の観点から、改善基準告示につき内容の改善が求められています。
このような流れを受け、労働政策審議会労働条件分科会の自動車運転者労働時間等専門委員会トラック作業部会では、令和3年4月30日以降、改善基準告示の見直しに向けて議論を行い、報告案を取りまとめました。

2.重要なポイント
基準(数値)の変更点は、下線で示しています。
①拘束時間の上限
・年間の拘束時間:従来の3,500時間が3,300時間に短縮されます。

・1か月の拘束時間:
〈原則〉従来の293時間が284時間に短縮されます。
〈例外〉従来の320時間が310時間に短縮されます。(※)

 ※労使協定の締結により、年間の総拘束時間が3,400時間を超えない範囲で年6回まで認められます。

・1日の拘束時間:13時間とし、延長する場合でも、15時間を限度とします。

②1日の休息時間(勤務間インターバル)
従来の継続8時間以上が、継続11時間以上を基本とし、9時間を下限とします。

③運転時間
2日平均で1日当たり9時間、2週間平均で1週間当たり44時間を上限とします。

④2人乗務の場合の特例
自動車運転者が同時に1台の自動車に2人以上業務する場合(車両内に身体を伸ばして休息することができる設備がある場合に限る)は、最大拘束時間を20時間まで延長することができます。また、休息時間を4時間まで短縮することができます。

⑤フェリーに乗船する場合の特例
自動車運転手が勤務の中途でフェリーに乗船するときは、フェリーに乗船している間は、原則として、休息時間として取り扱われます。

⑥休日労働
休日労働は、2週間に1回以内とします。

社会保険労務士法人LEC代表社員
特定社会保険労務士 滝 則茂 氏

中小企業福祉事業団幹事。東京都福祉サービス第三者評価評価者。
名古屋市生まれ。中央大学法学部法律学科卒業。1989年社会保険労務士登録。2007年特定社会保険労務士付記。東京リーガルマインド主任研究員として、企業研修、職業訓練、資格取得講座などの企画、教材開発、講義を担当。2003年4月より、社会保険労務士法人LECにて、労務相談、就業規則関連業務などに従事する一方、社労士向けセミナーの講師として活躍中。

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