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法令改正最前線(第62回『労働政策審議会障害者雇用分科会意見書』)

<滝 則茂 氏>

今回は、6月17日に厚生労働省が公表した労働政策審議会障害者雇用分科会意見書「今後の障害者雇用施策の充実強化について」を取り上げます。

1.意見書公表に至る経緯
障害者雇用の促進については、2018年7月に公表された「今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会報告書」を踏まえ、2021年11月から、労働政策審議会障害者雇用分科会で審議が行われ、その成果を取りまとめた意見書が公表されるに至りました。「研究会報告書」の公表から労政審での審議開始まで、3年以上間隔が空いていますが、これは、国や地方公共団体の多くの機関で、対象障害者の確認・計上に誤りがあり、法定雇用率未達成の状態が長年続いていたという不祥事があったことの影響によるものと思われます。

2.意見書の重要ポイント
分科会意見書の重要ポイントのうち、来るべき法改正に向けての方向性を示す部分をいくつかピックアップし、紹介します。なお、意見書では、民間事業主に関する措置と国・地方公共団体に関する措置のそれぞれについて意見が取りまとめられていますが、本稿では、もっぱら民間事業主に関する措置に絞って論述することとします。

〈週所定労働時間20時間未満の障害者の雇用に対する支援〉
現行法では、週所定労働時間20時間未満の障害者は、障害者雇用率制度や障害者雇用納付金制度の支援の枠組みの外に置かれています。しかし、就労を希望する障害者の中には、週20時間以上の労働が困難な者も相当程度いると考えられます。そこで、障害者雇用率制度の対象となる常用労働者については、週所定労働時間20時間以上という現行の枠組みを維持しつつも、「週所定労働時間20時間未満の雇用障害者数に応じて、障害者雇用納付金を財源とする特例的な給付金を事業主に給付する」との意見が示されています。なお、このような短時間雇用に対する支援が、週所定労働時間20時間未満の安易な雇用促進にならないよう、特例的な給付金の雇用対象となる者の所定労働時間の下限については、週10時間とすることが適当であるとしています。

〈障害者雇用に関する優良な事業主の認定制度の創設〉
中小企業については、障害者雇用の取組が停滞しているとの認識の下、経営者の理解を促進するとともに、先進的な取組を進めている事業主が社会的なメリットを受けることができるよう、障害者雇用に関する優良な中小企業に対する認定制度を創設すべきだとしています。そして、その際、幅広い項目を設定し、一定の点数以上の企業を認定する「ポイント制」を採用するのが適当であるとしています。

〈法定雇用率の段階的な引上げに関する検討〉
今後の障害者雇用率見直し時において、「法定雇用率を計算式の結果に基づき設定した上で、企業の障害者雇用状況や行政の支援状況等を勘案して、障害者雇用の質を確保する観点から必要と考えられる場合に、当該法定雇用率までの引上げを段階的に行うように運用する」こととし、その場合の具体的な引き上げ幅、引き上げ時期につき分科会で議論するのが適当であるとしています。

3.今後の見通し
今回の意見書の内容を踏まえ、厚生労働省で障害者雇用安定法の改正法案を作成し、早ければ、今年の秋に召集されるであろう臨時国会で審議されることになると思われます。

社会保険労務士法人LEC代表社員
特定社会保険労務士 滝 則茂 氏

中小企業福祉事業団幹事。東京都福祉サービス第三者評価評価者。
名古屋市生まれ。中央大学法学部法律学科卒業。1989年社会保険労務士登録。2007年特定社会保険労務士付記。東京リーガルマインド主任研究員として、企業研修、職業訓練、資格取得講座などの企画、教材開発、講義を担当。2003年4月より、社会保険労務士法人LECにて、労務相談、就業規則関連業務などに従事する一方、社労士向けセミナーの講師として活躍中。

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