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法令改正最前線(第61回『「多様化する労働契約のルールに関する検討会」報告書』)

<滝 則茂 氏>

今回は、3月30日に厚生労働省が公表した「多様化する労働契約のルールに関する検討会」報告書を取り上げます。この報告書の中には、労働基準法の労働条件明示ルール等の改正につながる具体的な提言が含まれており、今後の展開(労働政策審議会での審議等)が注目されます。 

1.報告書公表に至る経緯
本検討会は、①いわゆる無期転換ルール(労働契約法18条)の見直し、②多様な正社員の雇用ルールの明確化等の検討を行うことを目的として、厚生労働省労働基準局長が7名の学識経験者の参集を求めて開催したものです。2021年3月24日から本年の3月17日まで、計13回の検討会で議論を積み重ね、その成果を報告書として取りまとめ、3月30日に公表するに至りました。

2.報告書の重要ポイント
検討会報告書の重要ポイントのうち、将来の法改正に向けての提言に相当する部分をピックアップし、紹介します。
〈無期転換ルールに関する見直し〉
・無期転換を希望する労働者の転換申込機会の確保
労働者が無期転換ルールを理解した上で、無期転換申込みの判断ができるよう、無期転換申込権が発生する契約更新時に、労働基準法の労働条件明示事項(法15条1項、則5条1項)として、転換申込機会と無期転換後の労働条件について、使用者から個々の労働者に通知することを義務づけるのが適当であるとしています。

・無期転換前の雇止め等
紛争の未然防止や解決促進のため、①更新上限の有無及びその内容について、労働基準法上の労働条件明示事項である「期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項」(法15条1項、則5条1項1号の2)の中に含まれるものとすること、②いわゆる「雇止め基準」(平成15年厚生労働省告示第357号)の中に、最初の契約締結より後に更新上限を新たに設ける場合には、労働者の求めに応じた上限設定の理由説明を義務づけるとする条項を追加することが適当であるとしています。

・無期転換後の労働条件
無期転換者と他の無期契約労働者との待遇の均等について、労働契約法4条を踏まえて使用者に無期転換後の労働条件について考慮した事項の労働者への説明を促す措置を講じる(たとえば、いわゆる「雇止め基準」の中に条項を設ける)ことが適当であるとしています。

〈多様な正社員の労働契約関係の明確化等〉
・労働契約締結時の労働条件の確認
予見可能性の向上等の観点から、多様な正社員に限らず労働者全般について、労働基準法15条による労働条件明示(以下、「15条明示」という)の対象に、就業の場所及び従事すべき業務の変更の範囲を追加することが適当であるとしています。 

・労働条件が変更された際の労働条件の確認
変更後の労働条件の書面確認の必要性に鑑み、労働条件の変更時も15条明示の対象とすることが適当であり、多様な正社員に限らず労働者全般について、労働契約締結時に書面による明示の対象とされている労働条件が変更されたとき(①就業規則等の変更により労働条件が変更されたとき、②元々規定されている変更の範囲内で業務命令等により変更された場合を除く)は、変更の内容を書面で明示する義務を課す措置が考えられるとしています。 

3.今後の見通し
今後は、この検討会報告書を踏まえ、労働政策審議会労働条件分科会で、法改正を意識した審議が行われることになると思われます。省令や告示の改正が中心になるでしょうが、労働条件変更時にも労基法15条が機能することになるとすれば、「法律」の改正も必要になってきます。その場合、最速でも、来年の通常国会での審議になると考えられます。

社会保険労務士法人LEC代表社員
特定社会保険労務士 滝 則茂 氏

中小企業福祉事業団幹事。東京都福祉サービス第三者評価評価者。
名古屋市生まれ。中央大学法学部法律学科卒業。1989年社会保険労務士登録。2007年特定社会保険労務士付記。東京リーガルマインド主任研究員として、企業研修、職業訓練、資格取得講座などの企画、教材開発、講義を担当。2003年4月より、社会保険労務士法人LECにて、労務相談、就業規則関連業務などに従事する一方、社労士向けセミナーの講師として活躍中。

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