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法令改正最前線(第60回『全世代型社会保障構築会議』)

<滝 則茂 氏>

今回は、昨年の11月からスタートしている「全世代型社会保障構築会議」について紹介します。
1.会議の趣旨
この会議は、岸田内閣による社会保障制度改革推進に向け、「全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築する観点から、社会保障制度全般の総合的な検討を行う」ためのものとされています。山際全世代型社会保障改革担当大臣の下に、17人の学識経験者が参集して知恵を出し合い、近い将来の政策提言へとつなげていこうとするものです。

2.当面の論点
3月8日に行われた第2回全世代型社会保障構築会議の資料として、「当面の論点」が6項目示されています。以下、論点の項目と、社労士に関わる制度改正との関係で注目すべきポイントを紹介します。

①男女が希望どおり働ける社会づくり・子育て支援
育児休業制度の改善、育休を利用できない方の存在、男性育休の利用促進などが指摘されています。また、時短勤務などについて、仕事と育児との両立を図りやすくするための改善点も論点としています。

②勤労者皆保険の実現
この「勤労者皆保険」という言葉は、現在進みつつある「短時間労働者に対する厚生年金保険・健康保険の適用拡大」のさらなる促進という意味にとどまらず、将来的には、「フリーランスやギグワーカーへの社会保険の適用」も視野に入れたものとして用いられています。岸田首相の施政方針演説の中にも登場している言葉であり、今後の社会保障制度改革の方向性を示す一つのキーワードとみることができます。

③女性の就労の制約となっている制度の見直し
既婚女性の働くインセンティブを阻害する仕組み(社会保険や企業慣行等)をどう考えるかということで、所得税に関する106万円の壁とともに、健康保険の被扶養者、国民年金の第3号被保険者に関わる「130万円の壁」が検討課題として指摘されています。

④家庭における介護の負担軽減
介護休業等、介護離職を防ぐための制度の在り方が、論点の一つとされています。

⑤地域共生社会づくりについて
独居の高齢者等に対するサポートが課題になります。

⑥医療・介護・福祉サービスについて
サービス人材の確保・育成に向けて、人材育成の在り方も、論点とされています。

3.今後の流れ
まずは、今後の会議での議論の成果を一度取りまとめ、6月ごろに策定される政府の経済財政運営の指針(いわゆる「骨太方針」)に反映させるとの方針のようです。その後で、審議会等での審議を行うなど、法改正を意識した動きが具体化していくことになります。

社労士業務との関わりでみると、「勤労者皆保険」の動向が気になるところです。特に、フリーランス等への社会保険の適用拡大については、一般の労働者と働き方が異なるわけですから、単なる制度の拡大適用を超え、今までにない「新制度の創設」としての一面があることは否めません。したがって、このテーマに関しては多面的な検討が必要であり、法案化されるとしても、かなり時間がかかるのではないかと思われます。

社会保険労務士法人LEC代表社員
特定社会保険労務士 滝 則茂 氏

中小企業福祉事業団幹事。東京都福祉サービス第三者評価評価者。
名古屋市生まれ。中央大学法学部法律学科卒業。1989年社会保険労務士登録。2007年特定社会保険労務士付記。東京リーガルマインド主任研究員として、企業研修、職業訓練、資格取得講座などの企画、教材開発、講義を担当。2003年4月より、社会保険労務士法人LECにて、労務相談、就業規則関連業務などに従事する一方、社労士向けセミナーの講師として活躍中。

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