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法令改正最前線(第59回 雇用保険法等改正に向けての動向)

<滝 則茂 氏>

今回は、通常国会での審議が予定されている雇用保険法等の改正法案の動向をみていくことにします。

1.これまでの経緯
 一昨年の春以降、新型コロナウイルス感染症の流行を受けた緊急事態宣言の発令などにより、経済活動にブレーキがかかり、休業者や失業者の増大を招くなど、雇用にも大きな影響を及ぼしました。このような情勢への対応措置として、政府は、雇用調整助成金の拡充、新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金の創設等の雇用維持策を講じる一方、離職者に対しても、基本手当の給付日数延長の特例措置を設けています。
 その結果、失業率の上昇を一定程度抑えることはできましたが、雇用保険財政は悪化し、雇用保険臨時特例法等により、一般会計から労働保険特別会計への繰入を行うなど、財政面での対応が行われました。
そして、令和4年度以降の雇用保険制度の安定的な財政運営の在り方を検討すべく、次期通常国会に法案を提出するという政府の方針が、「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」(令和3年11月19日閣議決定)の中で明らかにされました。
 法改正に向けた論点の検討は、労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会において行われ、1月7日に「雇用保険部会報告」が提出されました。厚生労働省では、この部会報告を踏まえ、「雇用保険法等の一部を改正する法律案要綱」を作成、1月13日に、厚生労働大臣から労働政策審議会への諮問が行われました。

2.法律案要綱の重要ポイント
 この要綱の中には、職業安定法や職業能力開発促進法の改正なども含まれていますが、本稿では、もっぱら雇用保険法と労働保険徴収法の改正に絞り、社労士として特に押さえておきたいポイントを紹介します。

〈雇用保険法の一部改正〉
◎事業を開始した受給資格者等に係る受給期間の特例
 基本手当の受給期間は原則として、離職後1年までとされていますが、離職の日後に事業を開始したものその他これに準ずるもの(省令で、「離職前に当該事業を開始し、離職後に当該事業に専念する者」とする予定)が、公共職業安定所長にその旨を申し出た場合には、当該事業の実施期間(最大4年まで)は、受給期間に算入しないものとされます。なお、この特例の施行日は、令和4年7月1日が予定されています。

◎基本手当の支給に関する各種暫定措置の延長
 以下の暫定措置(令和4年3月31日までとされている)を3年間延長し、令和7年3月31日以前の離職者まで適用することとします。
・特定理由離職者(厚生労働省令で定める者に限る。以下同じ)を特定受給資格者とみなして基本手当の支給に関する規定を適用する
・特定理由離職者を就業促進手当の支給を受けた場合の特例(受給期間延長)の対象とする
・一定の要件を満たした特定理由離職者・特定受給資格者に地域延長給付を行う

〈労働保険徴収法の一部改正〉
◎雇用保険率の改正
・令和4年4月1日から9月30日までの雇用保険率
 雇用保険二事業分を1000分の0.5引上げます。その結果、トータルとしての雇用保険率は、1000分の9.5
 (農林水産業・清酒製造業:1000分の11.5、建設業:1,000分の12.5)となります。
 ご承知のように、雇用保険二事業分は全額事業主負担ですから、この段階では、給与計算には影響が出ませ
 ん。
・令和4年10月1日から5年3月31日までの雇用保険率
 失業等給付に係る分を1000分の4引き上げます。
 その結果、トータルとしての雇用保険率は、1000分の13.5(農林水産業・清酒製造業:1000分の15.5、
 建設業:1,000分の16.5)となります。

3.今後の見通し
 おそらく、年度末ぎりぎりのところで、改正法案は成立するものと思われます。そうなると、労働保険の年度更新は、今回の改正内容を踏まえて行うこととなります。
(本内容は令和4年1月13日時点の情報となります)

社会保険労務士法人LEC代表社員
特定社会保険労務士 滝 則茂 氏

中小企業福祉事業団幹事。東京都福祉サービス第三者評価評価者。
名古屋市生まれ。中央大学法学部法律学科卒業。1989年社会保険労務士登録。2007年特定社会保険労務士付記。東京リーガルマインド主任研究員として、企業研修、職業訓練、資格取得講座などの企画、教材開発、講義を担当。2003年4月より、社会保険労務士法人LECにて、労務相談、就業規則関連業務などに従事する一方、社労士向けセミナーの講師として活躍中。

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