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法令改正最前線(第51回『労基法による届出等における押印原則の見直し』)

<滝 則茂 氏>

今回は、現在、労働政策審議会労働条件分科会で審議が行われている「労働基準法に基づく届出等における押印原則の見直し」について紹介します。以下の記述は、8月27日に開催された第163回労働政策審議会労働条件分科会に厚生労働省が提出した資料(ホームページで公開されています)を参考に作成したものです。

1.労基法上の押印原則
労基法上の各種届出については、省令(労働基準法施行規則等)に規定された様式(たとえば、三六協定であれば、様式第9号)によって行うものとされることが多いのですが、その様式を見ると、使用者や労働者の押印欄が設けられているのが一般的です。つまり、様式を用いて手続を行う際には、使用者等の押印が原則として必要であり、これが手続を行う際の一つの負担となっています。昨今では、新型コロナウイルス感染症対策の観点からも、業務の在り方の見直し(たとえば、テレワークの推進)が大きな課題となっており、その中で押印原則の見直しがクローズアップされてきています。

2.労政審で示された厚生労働省の方針(案)
厚生労働省は、労政審(労働条件分科会)に以下のような方針(案)を提示しています。

・36協定届を含め、押印を求めている法令様式等については、押印原則を見直し、使用者及び労働者の

  •  押印欄の削除並びに法令上、押印又は署名を求めないこととする。
    ・押印原則の見直しを含め、電子申請における電子署名の添付も不要とする。
    ・また、押印を求めている法令様式のうち、過半数代表者の記載のある法令様式については、
  •  36協定届も含め、様式上にチェックボックスを設けることとする。

上記のうち3項目目に示された「チェックボックスの活用」については、下記のような方向性が示されました。また、8月27日に公表された一連の資料の中には、36協定の新たな様式の案も含まれています。

 ①押印廃止後、法令様式上に、協定当事者が適格であることについてのチェックボックスを設け、
  使用者がチェックした上で、労働基準監督署長に届け出ることとする。
  <過半数労働組合の場合>
   ・事業場の労働者の過半数で組織されていること
  <過半数代表者の場合>
   ・事業場の労働者の過半数を代表していること
   ・管理監督者ではないこと
   ・過半数代表者の選出方法が適正であって、使用者の意向に基づき選出された者でないこと
 ②新たに設けるチェックボックスにチェックがない場合、形式上の要件を備えていないものとする。

押印欄の廃止は、単なる規制緩和、負担軽減の施策にとどまるものではありません。これを契機に、従来ともすれば形骸化していた協定締結プロセスの適正化を図っていくことが大切だという趣旨です。

3.今後の見通し
労政審(労働条件分科会)での今後の審議においては、押印原則に関し何らかの見直しを行うという方向性が打ち出される公算が高いと思われます。押印原則については、労基法の本則に規定されている訳ではありませんので、その見直しに際し、法律の改正は必要ありません。ただし、たとえば、「就業規則に係る意見書」のように、省令(労働基準法施行規則)で労働者を代表する者の署名又は記名押印が求められているものもありますので、省令の改正は必要になります。
また、厚生労働省は、今回の見直しを契機に、36協定等の労使協定締結の必要性の周知・徹底を図っていきたいとの意向を示していますので、この点を意識した通達の発出(場合によっては、省令の改正)が行われるものと思われます。

社会保険労務士法人LEC代表社員
特定社会保険労務士 滝 則茂 氏

中小企業福祉事業団幹事。東京都福祉サービス第三者評価評価者。
名古屋市生まれ。中央大学法学部法律学科卒業。1989年社会保険労務士登録。2007年特定社会保険労務士付記。東京リーガルマインド主任研究員として、企業研修、職業訓練、資格取得講座などの企画、教材開発、講義を担当。2003年4月より、社会保険労務士法人LECにて、労務相談、就業規則関連業務などに従事する一方、社労士向けセミナーの講師として活躍中。

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