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法令改正最前線(第29回『同一労働同一賃金ガイドライン案』)

<滝 則茂 氏>

安倍内閣が推進している「働き方改革」に向けての第一歩として、政府は、昨年の12月20日に「同一労働同一賃金ガイドライン案」を公表しました。これは、ガイドラインの前提となる立法(労働契約法、パート労働法、労働者派遣法の一括改正)がなされていない段階での「案」であり、特に拘束力はありません。しかし、ここで示された同一労働同一賃金に関する基本的な考え方や具体例(問題とならない例・問題となる例)は、今後の労務管理を考えていく上で、示唆に富む内容になっています。是非一通り、目を通されることをお勧めします。本稿では、最初に本ガイドライン案の目的を確認し、その後で、今後の労務管理を考える上で留意すべきテーマをいくつかピックアップして紹介することとします。

1.ガイドライン案の目的

本ガイドライン案は、正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指すものとされています。そして、その前提として、各企業において、職務や能力等の内容を明確化し、それに基づく公平な評価の推進、賃金制度の構築を行っていくことが望ましいとしています。つまり、同一労働同一賃金の実現を図っていくためには、人事制度がきちんとしていることが肝要だということです。

2.今後の労務管理を考える上で留意すべきテーマ

  • ①賞与の支給
  • 「賞与について、無期雇用フルタイム労働者には職務内容や貢献等にかかわらず全員に支給しているが、有期雇用労働者又はパートタイム労働者には支給していない」 実際には、しばしば見られる事例ですが、「問題となる例」として示されています。まずは、「非正規労働者には一切支給しない」という取扱いは見直す必要があるでしょう。
  • ②役職手当の支給
  • 「役職手当について役職の内容、責任の範囲・程度に応じて支給している会社において、無期雇用フルタイム労働者Xと同一の役職名で役職の内容・責任も同一である役職に就く有期雇用労働者Yに、Xに比べて低額の役職手当を支給している」 これもやはり、「問題となる例」に該当します。もし仮に、Yがパートタイム労働者であれば、時間比例の役職手当を支給すればよいとされています。
  • ③病気休職
  • 「契約期間が1年である有期雇用労働者に対し、病気休職の期間は契約期間の終了日までとしている」 もちろんこれは、「問題とならない例」として紹介されています。ただ、注意していただきたいのは、本ガイドライン案にあっては、「有期雇用労働者にも、労働契約の残存期間を踏まえて、付与しなければならない」と記述されていることです。これは多くの会社の実態とは異なっていると思われます。今後、ひとつの論点として検討されることと思われます。
  • ④無期雇用フルタイム労働者と定年後の継続雇用の有期雇用労働者の間の賃金差
  • 「実際に両者の間に職務内容、職務内容・配置の変更範囲、その他の事情の違いがある場合は、その違いに応じた賃金差は許容される」としていますが、「退職一時金及び企業年金・公的年金の支給、定年後の継続雇用における給与の減額に対応した公的給付がなされていることを勘案することが許容されるか否か」については、今後の検討課題とするにとどめています。後者の問題は、「同一労働同一賃金」の趣旨との整合性を考えると安易に許容することはできないと思われますが、今後の進展が気にかかるところです。

 

※本内容は、2017年2月発刊時点の情報となります。

社会保険労務士法人LEC代表社員
特定社会保険労務士 滝 則茂 氏

中小企業福祉事業団幹事。東京都福祉サービス第三者評価評価者。
名古屋市生まれ。中央大学法学部法律学科卒業。1989年社会保険労務士登録。2007年特定社会保険労務士付記。東京リーガルマインド主任研究員として、企業研修、職業訓練、資格取得講座などの企画、教材開発、講義を担当。2003年4月より、社会保険労務士法人LECにて、労務相談、就業規則関連業務などに従事する一方、社労士向けセミナーの講師として活躍中。

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