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法令改正最前線(第54回『健康保険法等の改正法案』)

<滝 則茂 氏>

今回は、2月5日に政府が国会に提出した「全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法案」について紹介します。

1.改正の趣旨
今回の改正は、全世代対応型の社会保障制度を構築すべく、健康保険等における傷病手当金の支給期間の通算化、育児休業中の保険料免除の要件の見直し、後期高齢者医療における一部負担金の負担割合の見直し、未就学児に係る国民健康保険料等の減額措置の導入等の措置を講ずるものです。  以下、本稿においては、健康保険法の改正事項のポイントを述べることにします。

2.健康保険法改正のポイント
①任意継続被保険者に関する事項(2022年1月1日施行予定)
従来、任意継続被保険者が自己の意思により資格を喪失させる手続は認められていませんでしたが、改正が実現すれば、これが可能になります。すなわち、任意継続被保険者でなくなることを希望する旨を保険者に申し出ることにより、申出が受理された日の属する月の翌月1日から任意継続被保険者の資格を喪失することになります。

②傷病手当金に関する事項(2022年1月1日施行予定)
従来、傷病手当金の支給期間は、支給開始日から起算して1年6月までとされ、支給が断続的であっても、支給開始日から1年6月が過ぎればそこで打ち切りとされていました。改正法案では、このような取扱いを見直し、支給開始日から通算して1年6月間支給するものとされています。

③保健事業における健康診断等の情報の活用の促進に関する事項(2022年1月1日施行予定)
保険者は、被保険者等の健康の保持増進のために必要な事業を行うに当たって必要があると認めるときは、被保険者等を使用している事業者等(労働安全衛生法に規定する事業者等が想定されています。以下同じ)又は使用していた事業者等に対し、労働安全衛生法等の法令に基づき当該事業者等が保存している被保険者等に係る健康診断に関する記録の写し等を提供するように求めることができる、という趣旨の規定が新設されます。 また、労働安全衛生法等の法令に基づき保存している被保険者等に係る健康診断に関する記録の写しの提供を求められた事業者等は、当該記録の写しを保険者に提供しなければならないとされています。

④育児休業中の保険料の免除要件に関する事項(2022年10月1日施行予定)
従来から、育児休業等をしている被保険者(産前産後休業をしていることにより保険料を徴収しないものとされている被保険者を除く)の保険料については、育児休業等の開始日の属する月から育児休業等が終了する日の翌日が属する月の前月までの月の保険料徴収が免除されていました。改正法案ではこれに加え、育児休業等の開始日の属する月とその育児休業等が終了する日の翌日が属する月とが同一である場合であっても、14日以上休業を取得している場合は、当該月の保険料を免除するものとしています。

3.今後の見通し
今回の改正法案の内容から見る限り、与野党対決型の法案とは思えません。会期途中での衆議院の解散といったようなハプニングがない限り、今国会で成立するのではないでしょうか。

社会保険労務士法人LEC代表社員
特定社会保険労務士 滝 則茂 氏

中小企業福祉事業団幹事。東京都福祉サービス第三者評価評価者。
名古屋市生まれ。中央大学法学部法律学科卒業。1989年社会保険労務士登録。2007年特定社会保険労務士付記。東京リーガルマインド主任研究員として、企業研修、職業訓練、資格取得講座などの企画、教材開発、講義を担当。2003年4月より、社会保険労務士法人LECにて、労務相談、就業規則関連業務などに従事する一方、社労士向けセミナーの講師として活躍中。

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