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法令改正最前線(第80回 『「労災保険制度の在り方に関する研究会」中間報告書』)

<滝 則茂 氏>

今回は、7月30日に厚生労働省から公表された「労災保険制度の在り方に関する研究会」(以下、「本研究会」とします。)の中間報告書を取り上げることとします。

1 本研究会のこれまでの動向
本研究会は、労災保険制度の現代的な課題を総合的に検討するための学識経験者による研究会です。昨年の12月24日にスタートし、7月29日まで、全8回にわたり議論が行われています。このたび、これまでの議論の成果を「中間報告書」という形で取りまとめ、公表しました。
本稿においては、この中間報告書で取り上げられている論点のうち、委員の中で制度見直しの方向性が一致しているものを幾つかピックアップして紹介します。委員の方々の考え方が方向性として一致しているということは、近い将来、その趣旨に沿った法改正が行われる可能性が高いということです。

2 「適用関係」の見直し
〈家事使用人への適用〉
家事使用人については、これまで、労働基準法の適用除外とされており、労災保険においては、第2種特別加入(介護作業従事者及び家事支援従事者)の可能性が認められてきました。しかしながら、その就業実態の変化(「住込み」から「通い」へ)を踏まえ、現在、労働基準法の適用を認める方向で労働政策審議会での審議が行われています。このような流れを踏まえ、労災保険法を家事使用人にも強制適用すべきだとの考え方が示されていいます。

〈暫定任意適用事業の適用〉
これまで、暫定任意適用事業とされてきた零細な農林水産業について、強制適用としない必要性は乏しく、農林水産省とも連携の上、順次、強制適用に向けた検討を進めるべきだとしています。

3 「給付関係」の見直し
〈遺族補償等年金(夫と妻との取扱いの差異)〉
被災労働者の遺族である配偶者について、①妻は年齢に関係なく受給権者となれるのに対し、夫は妻の死亡時に55歳以上又は一定の障害が要件となっている、②受給資格者となる遺族が妻のみの場合、55歳以上又は一定の障害があり、かつ、生計同一の他の受給資格者がいなければ給付基礎日額の153日から175日に増額されるが、遺族が夫のみの場合にはこのような特別加算制度の適用はない、といった取扱いの相違があります。かかる支給要件の差異は、男女の就労状況や家族の在り方の変化を踏まえると合理性に欠け、解消すべきだとしています。

〈社会復帰促進等事業の処分性〉
社会復帰促進等事業に関しては、平成15年の最高裁判決を踏まえ、労災就学援助費同様の性質を有する事業については処分性がある(審査請求や取消訴訟の対象となる)とされてきましたが、特別支給金については、処分性が認められていませんでした。しかしながら、ボーナス特別支給金につき算定基礎日額につき紛争を生じさせる可能性が相当あると考えられるといった意見もあり、特別支給金も含め処分性を認め、審査請求や取消訴訟の対象とするのが適当であるとしています。

4 「徴収等関係」の見直し
〈メリット制の存廃〉
メリット制については、一定の災害防止効果があるのに加え、事業主の負担の公平の観点からも一定の意義が認められると考えられるので、今後も制度を存続させ適切に運用することが適当であるとしています。

社会保険労務士法人LEC
特定社会保険労務士 滝 則茂 氏

中小企業福祉事業団幹事 名古屋市生まれ。中央大学法学部法律学科卒業。1989年社会保険労務士登録。2006年特定社会保険労務士付記。

長年にわたり、LEC東京リーガルマインド専任講師として、企業研修、職業訓練、資格取得講座などの企画、教材開発、講義を担当。2003年4月より、社会保険労務士法人LECにて、労務相談、就業規則関連業務などに従事する一方、社労士向けセミナーの講師として活躍中。

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