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法令改正最前線(第79回 『労働基準法における「労働者」に関する研究会』)
<滝 則茂 氏>
今回は、5月2日からスタートした「労働基準法における『労働者』の在り方に関する研究会」(以下、「本研究会」とします)について紹介します。なお、以下の記述は、5月1日に厚生労働省から公表されている「労働基準法における『労働者』に関する研究会開催要綱」を参照しています。
1 本研究会の趣旨・目的
2024年1月から、今後の労働基準関係法制についての中長期的な検討と、働き方改革関連法附則12条に基づく労働基準法等の見直しについての具体的な検討を行うために、「労働基準関係法制研究会」が開催され、本年1月8日に検討結果を取りまとめた研究会の報告書が公表されています。
この研究会報告書においては、1985(昭和60)年に取りまとめられた労働基準法研究会報告「労働基準法の『労働者』の判断基準について」に関し、その作成後約40年が経過し、働き方の変化・多様化に対応できない部分が生じているので、この間に蓄積された事例・裁判例等を分析・研究し、学説も踏まえて見直しの検討をすること、国際的な動向も視野に入れつつ総合的な研究を行うことの必要性について指摘がなされ、厚生労働省において専門的な場を設けて総合的な検討を行うべきこととされています。
そこで、厚生労働省は、労働基準法上の労働者性に関し幅広い知見を有する専門家を参集し、労働者性の判断基準に関する分析・研究を深めることを目的として、本研究会を開催するに至りました。
2 本研究会の運営
本研究会は、厚生労働省労働基準局長が、学識経験者の参集を求め、開催するものとされています。参集されたメンバーは全9名で、いずれも学者の先生方です。また、本研究会、会議資料及び議事録については、原則として公開とされています。
3 本研究会における検討事項
本研究会においては、以下の事項について、調査・検討を行うものとされています。
①労働基準法上の労働者性に関する事例、裁判例等や学説の分析・研究、
プラットフォームワーカーを含む新たな働き方に関する課題や国際的な同項の把握・分析
②労働基準法上の労働者性の判断基準の在り方
③新たな働き方への対応も含めた労働者性判断の予見可能性を高めるための方策
4 今後の見通し
労働基準法全体の見直しに関しては、先に指摘した「労働基準関係法制研究会」の報告を踏まえ、労働政策審議会労働条件分科会において審議が継続中です。ただし、法第9条の労働者の定義規定の見直しについては、本研究会での検討結果を踏まえた対応が求められるものと思われます。また、「労働者性」に関しては、労働基準法のみならず、労働安全衛生法や労災保険法など、広く労働関係法令に関わるテーマです。したがって、この論点については、近い将来(早ければ、来年の通常国会で審議)に予定される労働基準法改正の対象には含まれないのではないでしょうか。プラットフォームワーカーなど、新しい働き方への対応は、当面は、指針や通達での対応にとどまるものと考えられます。
