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法令改正最前線(第57回 『裁量労働制見直しの動向』)

<滝 則茂 氏>

今回は、近年、厚生労働省が推進している裁量労働制見直しに関する動向について紹介します。

1.裁量労働制の現状
労働基準法上の裁量労働制には、①労使協定による「専門業務型裁量労働制」(労基法38条の3)、②労使委員会決議による「企画業務型裁量労働制」(労基法38条の4)という2つの類型が存在します。いすれも、時間配分や仕事の進め方を労働者の裁量に委ね、自律的で創造的な働き方を目指すものですが、対象業務の範囲、労働者の裁量と健康を確保する方策等について課題があると考えられています。

2.裁量労働制実態調査
厚生労働省は、上記の課題の検討に資するため、「専門業務型」「企画業務型」それぞれの裁量労働制の適用・運用実態や裁量労働制の適用・非適用による労働時間の差異等を把握することを目的として、「裁量労働制実態調査」を実施しました。この調査は、令和元年10月31日現在の状況等について同年11月~12月に実施され、本年6月25日に結果が公表されています。以下に、この調査の結果に関し、注目すべきポイントをいくつか紹介します。

・裁量労働制適用労働者における労働時間の長さ
1週間の平均労働時間数は45時間18分、1日の平均労働時間数は9時間0分となっており、それほど長時間労働であるとは言えないようです。

・裁量労働制に対する事業場としての意見
専門業務型裁量労働制の適用事業場では、「特に意見はない」が最も高く(39.5%)、「制度を見直すべき」は15.8%にとどまっています。他方、企画業務型裁量労働制の適用事業場では、「制度を見直すべき」が最も高くなっており(39.7%)、現行の企画業務型裁量労働制は、経営者にとって、今一つ使い勝手が悪い制度であることが窺えます。

・労働者における健康状態の認識状況
裁量労働制の適用労働者にあっては、健康状態を「よい」と認識する労働者が32.2%、「ふつう」と認識する労働者が29.4%となっています。これに対し、裁量労働制が適用されていない事業場で裁量労働制が適用される業務に相当する業務に従事している労働者では、健康状態は「ふつう」が最も割合が高く(33.8%)、「よい」は30.0%です。つまり、裁量労働制は、わずかですけれども、労働者の健康に寄与しているとみることができます。

3.これからの労働時間制度に関する検討会
上記の統計調査で把握した実態を踏まえ、厚生労働省(労働基準局)は、裁量労働制やその他の労働時間制度について検討を行うことを目的として、「これからの労働時間制度に関する検討会」を開催することにしました。この検討会は、7名の学識経験者によって組織され(座長は、荒木尚志東大教授)、7月26日からスタートしています。また、9月3日から、「企業からのヒアリング」も始まっており、裁量労働制に関する制度改革案が、近い将来、検討会の報告書というような形で公表されるものと思われます。
そして、その後に労働政策審議会での審議を経て、裁量労働制の見直しをメインテーマとする労働基準法の改正法案が、早ければ、来年の1月に召集される国会(常会)に上程されると思われます。

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社会保険労務士法人LEC代表社員
特定社会保険労務士 滝 則茂 氏

中小企業福祉事業団幹事。東京都福祉サービス第三者評価評価者。
名古屋市生まれ。中央大学法学部法律学科卒業。1989年社会保険労務士登録。2007年特定社会保険労務士付記。東京リーガルマインド主任研究員として、企業研修、職業訓練、資格取得講座などの企画、教材開発、講義を担当。2003年4月より、社会保険労務士法人LECにて、労務相談、就業規則関連業務などに従事する一方、社労士向けセミナーの講師として活躍中。

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