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業種特化社労士の視点から(第28回『整骨院編』)

<金山 驍 氏>

業界の特徴
打撲、捻挫、脱臼、骨折などの患部を整復する技術は、以前は「ほねつぎ」という名称で親しまれてきました。「ほねつぎ」を提供する院は、接骨院や整骨院等の名称で開院して、庶民の身近な伝統医療として世に普及しています。  全国には、整骨院、接骨院、鍼灸接骨院、整体院、リラクゼーション・マッサージ院、中国整体など、「治療院」といわれる医業類似行為を行う様々な施術所が数多く存在していますが、本稿では総称して「整骨院(業界)」とさせていただきます。整骨院は、柔道整復師をはじめとした国家資格を保有し開業する場合や、民間資格や無資格で開業する場合など様々です。国家資格と民間資格を組み合わせて多くの患者様に支持されている院も多く存在します。

国家資格
・柔道整復師
 ケガやスポーツなどによる外傷に対して、手術や薬を使わずに回復させ、
 快適な生活を送れるよう導く専門家
・鍼灸師
 鍼(はり)や灸(きゅう)を使って、患部やツボを施術し、体の内側から
 自然治癒力を高める東洋医学の専門家
・あん摩・ マッサージ指圧師
 各手技(なでる・押す・揉む・叩くなどのあらゆる行為)を用いて人体の変調を改善する専門家
民間資格
・整体師、セラピスト 等

整骨院のクライアントについて
私の場合、整骨院にも特化しておりますが、医療関連業界全体(クリニック、病院、歯科医院、整骨院、動物病院、薬局、バイオベンチャー等)に特化しています。拙著『10年継続できる士業事務所の経営術』にも書かせていただきましたが、業種に特化することは特にこれからの事務所運営にとって重要であると考えております。
初めて整骨院の顧問になったときは、1店舗目の開院から関与させていただきました。現在では、1~2店舗の院から、数10店院展開している法人まで幅広く対応しております。ホームページに『お客様の声』として、整骨院のクライアント様の「生の声」を掲載し、整骨院のホームページを作成している業者様に、整骨院向けのランディングページ(1枚の縦長レイアウトのホームページ)を作成(※)してもらいました。業界のことに精通しているからこそ、どの様にすれば整骨院を経営している見込み客にアプローチできるかがわかると考えたからです。また、整骨院に特化した税理士さんとも仲良くさせていただいております。
※ホームページは、「社労士の職業倫理に照らし不適切と考えられる情報発信に関する指導指針」の内容を参考にし、社労士としての品位保持・職業倫理の向上のため、制作業者と最大限協議し作成しています。

整骨院業界の傾向と対策
厚生労働省の統計(2016年)によると、整骨院は全国に計13万6460カ所存在しているようです。コンビニより多く、その数はおよそコンビニの2倍と言われています。市場環境は、過剰供給による競争激化が避けられない状況です。
TKC経営指標(令和2年度版)、第14次業種別審査事典、整骨院経営者へのヒアリング等から推測すると、年商「~5000万円」が70%以上を占め、そのほとんどが年商2000万円程度です。地域にもよりますが、年商5000万円を超える整骨院の多くが分院展開をしていると推測されます。

接骨院市場規模
当然のことながら、店舗数や売上規模に応じたアプローチが必要であり、状況を見極めながら顧客に最適な提案をしていきます。わかりやすいように、整骨院を1~2院運営、3~10院程度運営、10院以上運営の規模でセグメント(分類)し、それに合わせたアプローチの例をご紹介します。

ステージ  院数    売上規模
ステージ2 1~2院   ~5000万円
ステージ3 3~10院   5000万円~2億5千万円
ステージ3 10院以上~ 2億5千万円以上~

※TKC経営指標(令和2年度版)、第14次業種別審査事典等、整骨院経営者へのヒアリング等を基に筆者作成

〇ステージ1:1~2院経営の場合
<労災・雇用保険加入、雇用契約書等の整備>
最低限加入が義務付けられている労災保険にすら加入していない院は多いと考えられます。以前、1院経営の見込み客から、労災保険加入を検討しているので、来てほしいとの依頼があり、訪問して労災保険の必要性や未加入のリスクなどを1時間ほどかけて説明しましたが、結局加入(依頼)されませんでした。私の力不足もありましたが、この経営段階では、いかに保険加入の必要性を納得してもらえるかがカギになるでしょう。また、口頭で従業員との雇用契約を済ませている場合もあるため、雇用契約書(労働条件通知書)の整備を勧めると良いでしょう。

〇ステージ2:3院~10院経営の場合
<就業規則の作成、人事評価制度構築、法人化に伴い社会保険加入>
この頃から従業員・パートタイマーを含めると5~10人以上になってきます。先見性があり、事業の発展を目指している経営者の場合、就業規則の作成などに着手し始める傾向があります。
※2店舗目あたりから就業規則作成や社保加入を検討しているところもあります。
就業規則作成では、受付などの対応をパートタイマーが行う場合も多いため、パートタイマー規程も一緒に作成することが多いといえます。休日の取得方法を相談されることも多いです(「週休2日制」「完全週休2日制」導入等)。
人事評価制度については、各院によって様々ですが、新規患者数/月、ベッド回転率(数)/月、患者対応数/月、リピート率(数)/月等の売上要素を考慮して作成する場合もあります。接客業ですので、患者様に対しての対応等を重点的に評価要素に入れる場合もあるでしょう。
社会保険加入については、従業員さんへの社会保険セミナーなどを行ったりもしました。整骨院は、女性も多い職場なので、社会保険に加入し、産前・産後休業や育児のサポートが院としてしっかりしていることを伝えることができれば、安心してもらえ、定着にも繋がります。

〇ステージ3:10院以上経営(株式会社として法人化している場合が多い)の場合
<退職金制度、給与計算業務>
この頃になると、従業員の福利厚生の充実を図り、いかに従業員に会社に定着してもらえるかが課題の一つになります。その中で、退職金制度の整備があります。会社によっては、中小企業退職金共済制度を利用する場合もあれば、確定拠出年金を導入する場合もあります。
また、経理担当者が労務のことまで一緒に見ていた場合、人数の増加に伴い、給与計算業務まで手が回らないこともあります。突然依頼されることもあるため、日頃から担当者の業務上の悩みを聞ける程度には関係性を深めておくと良いでしょう。

コロナ渦での整骨院需要
私の感覚的なところではありますが、コロナが蔓延し始めた2020年3~6月頃は、患者さんは通院等を控えていましたが、徐々に戻り始めていると感じます。「要」「急」を要する、健康維持に必要不可欠な業種であるため、社会的な需要は安定していると考えます。
顧問先開拓にあたっては、様々なアプローチ手法があります。一例になりますが、採用コンサルティングや、前述した育児・出産のサポート等が喜ばれると思います。整骨院業界は、不正請求問題や供給過剰による無理な多店舗展開など、問題点・課題点も多い業界なので、足元をしっかり固めて経営されているかを見極めてお付き合いされることも重要です。

社会保険労務士 金山経営労務事務所 所長
社会保険労務士 金山 驍 氏

1978年4月生まれ東京都出身。
医療労務コンサルタント
日本大学大学院ビジネススクール卒業(MBA:経営学修士)
東京都新宿区西新宿にて事務所を運営。
病院・クリニック・歯科医院・整骨院・動物病院など医療系の労務対策に強みがある。新聞(日経新聞等)、各専門誌(労務事情、企業実務、みずほ総研等)、書籍等のメディア執筆・掲載実績多数。 趣味は、ゴルフ、将棋。ゴルフはアベレージ+α。日曜日朝のNHK杯将棋トーナメントを毎週見ている。 養神館合気道二段。娘2人と一緒に鬼滅の刃なども鑑賞する。
◆主な著書
・10年継続できる士業事務所の経営術 ‐安定運営のための48のポイント‐
 /合同フォレスト(重版)
・新しい労働時間管理 =導入と運用の実務=/日本実業出版社(共著)

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