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業種特化社労士の視点から(第27回『動物病院編』)

<片岡 賢知 氏>

動物病院に特化した理由と思い

はじめに私の事を少しお話しさせていただくと、大学は獣医学部を卒業し、その後は約10年間動物の飼料を扱う商社で営業職に従事しておりました。社会保険労務士を目指したきっかけは、動物病院に勤務していた友人達からの相談でした。相談内容は「残業代の支払いがない」、「出産するが社会保険に未加入だったので手当金等が受け取れなかった」、「有給休暇を取得されてくれない」などです。ちなみに私の勤めていた商社も1日1,000円の営業手当というものがあるだけで残業代の支払いは無く、当時の私はそのようなものだと思い込んでおりました(苦笑)。そのような自身の状況と友人の相談から、頑張っている人が報われないで辞めてしまったりする会社や社会はおかしいのではないかと感じ、労務に関する法律を独学で勉強し社会保険労務士という資格を知ったのがきっかけとなりました。

零細企業だったため社内での人事部門への転換は不可能で、その後、より多くの業態を知りたいとの想いから人材紹介会社に転職し、独学で社会保険労務士の資格を取得しました。そして現在の会社に転職しましたが、自身の力を試すため、また社会保険労務士を目指すきっかけとなった動物病院の支援のために独立しました。その際にサービスのブラッシュアップを行い、社会保険労務士は数多くいれども唯一無二の存在である「獣医学部卒業の社会保険労務士」として、動物病院へ特化したサービスを展開。現在では更に絞り込んで就業規則と助成金に特化したサービスを展開しています。頑張っている人が報われ「会社も従業員も顧客も幸せになれる会社」を一つでも多く作る手助けをしたいとの想いで活動をしております。

 

動物病院の現状と展望

既述の通り、動物病院は残業代の未払い、社会保険や労働保険の未加入、徒弟制度のような旧態依然とした状況と過重労働など、労務管理が正常に行われていない、いわゆるブラック企業が多く存在する業界でした。私の友人は一定時間以上の残業代の支給はなく、時給換算をすると500円程の給与しかもらえていない状況もありました。また、職人気質の院長などで明らかにパワハラと認定されるような振る舞いをする人も珍しくありません(1年持たずに従業員が次々とうつ病などの体調不良を発症し辞めていく病院も見てきました)。以前はこのような状況はある種当たり前とされてきましたし、今もそのような病院は多く存在します。しかし、現在はブラック企業という呼称が市民権を得てきており、動物病院志望の学生や中途採用者でも福利厚生や職場環境を重視する傾向になり、労務管理の改善に取り組む病院も増えてきております。そもそも現在は動物病院等の臨床現場より公務員や企業の研究室などへの就職や転職希望者が増加傾向にあります。公務員や一般企業とは福利厚生等の差が顕著なことが要因で人材不足の深刻化が進んでおり、対策も急務となっています。他にも業界全体のトレンドとしてはイオン等の大企業の子会社、法人化に伴う大規模な運営にシフトする企業もあり、やはり労務管理の徹底や福利厚生に力を入れる傾向も強まっています。また、資本力から高度医療と専門特化への展開や、電子カルテやリモート診療などのICT化などのデジタルトランスフォーメーションの流れも強くなっております。このような環境変化を受け、動物病院間の格差が如実になり、小規模な動物病院でも人材確保や定着のため業務改善や働き方改革に取り組む風潮が出てきており、従来の税理士や会計士に加えコンサルタントや社会保険労務士に依頼も増えていると感じております。実際は36協定の提出がされていなかったり等の基本的なところから、有給休暇の取得の義務化や残業時間の上限規制など直近の働き方改革関連法について、そもそもどこから取り組んでよいのかも分からない病院も多く、問い合わせは非常に増えております。その対応に加え、予防接種の時期など年間で繁忙期が分かれていることから、1年単位の変形労働時間とは相性がよく、就業規則の作成と合わせての導入は非常にご好評いただいています。

どの業界にも通ずることですが、時流や変化に対応していく取り組みを行う病院と、旧態依然のままの病院での格差が広がり、後者は淘汰されていく傾向にあります。

ペットの飼育数もバブル以降、大型犬は減少し小型犬や猫は増加など、トレンドはありますが総じて増加傾向にあるとされております。直近のコロナによる“おうち時間”の増加はペット数増加の後押しになるとも言われております。

動物病院の開業数は年間150~200院と増加傾向であるのに対して、廃業数も100~150院と言われ、多くの病院が開業している反面、同等相当の廃業もあります。動物病院は人の病院と比較すると開業資金はそこまで多く掛からず、家族間での継承もそこまで多くないのが要因とされています。新陳代謝の比較的激しい業界であり、そこで開業のための手続きやM&Aでの事業承継のサポートなどコンサルタントや社会保険労務士が活躍出来るケースも多くなっております。特に資金調達や補助金や助成金の支援の希望も高まっており、その分野を敬遠している税理士や社会保険労務士も多いのでビジネスチャンスは多いと感じております。

 

業種に特化するメリットと重要性

第一に高いサービスと安心の提供があります。業界に特化する分、知識や経験を蓄積する機会が増え、クライアントにより充実したサービスとそれに伴う安心感を与えることが出来ます。

第二にマーケティングの優位性を築く事が出来ます。「社会保険労務士・就業規則」で検索すると約430万件出てきますが、「社会保険労務士・就業規則・動物病院」で検索すると約30万件になり、当社のLP(ランディングページ)はトップ画面に表示されます。SEO対策等は特にしていない中でも十分な効果があり、合わせて“獣医学部を卒業した経験豊富な社会保険労務士”は就業規則の作成を検討されている動物病院にとっては選ばれる理由となり、他社への優位性が築けております。業界を特化する事で商機を逃してしまうという不安を持つ方もおられますが、可能な限り特化しその後に広げていく方が結果は多くの商機を得られると感じております。

最後に業界に特化するにあたって一番大切なことは「想い」であると感じております。業界に特化した方が有利だから、ニッチな産業で儲かりそうだから、という理由で選ばれると多くは失敗すると思います。大切なのは業界の力になり良くしていきたいとの想いをもって貢献していく事だと思います。私は、ペットは無くてはならない存在で、獣医(看護師)という仕事は素晴らしいのに、環境のために報われず辞めてしまうことは間違っており、少しでも従業員が幸せになれる動物病院の運営に寄与したいとの想いを持っております。これを話すことによって共感した院長と良好な関係を築き、多くの依頼をいただいております。お金等を目的とした場合はすぐに見透かされてしまいます。これから業界に特化したサービスの展開を検討されている方も、きっかけはどのようなものであれ、その業界への熱い想いを持って臨んでいただくことが成功には大切だと思います。

ユナイテッド・アドバイザーズ社会保険労務士法人
社会保険労務士 片岡 賢知 氏

麻布大学獣医学部動物応用化学科卒業。卒業後は動物の飼料を扱う専門商社で約10年勤務後、人材総合会社にて営業職に従事。社会保険労務士試験合格後に東京都内の総合士業グループの社会保険労務士法人に転職。独立後は東京都多摩エリアにて中小企業向けの就業規則コンサルティングと助成金申請の支援を行う。2019年4月にユナイテッド・アドバイザーズ社会保険労務士法人の役員に就任し、現在に至る。独立後より、人脈と過去の経験を活かし、動物病院に特化したコンサルティングを得意としている。

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