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法令改正最前線(第48回『年金法等改正法案』)

<滝 則茂 氏>

今回は、現在開会中の第201回国会(常会)に提出されている「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律案」について紹介します。 今回の改正法案は、社会保障審議会年金部会等での審議を経て作成されたものです。その内容は多岐にわたっていますが、本稿では、①被用者保険の適用拡大、②在職中の年金受給の在り方の見直し、③受給開始時期の選択肢の拡大に関連する改正事項の重要ポイントを確認することにします。

1.被用者保険の適用拡大

①特定適用事業所の規模要件の緩和

短時間労働者を被用者保険の適用対象とすべき事業所(特定適用事業所)の企業規模要件が、段階的に引き下げられます。現在は、500人超規模の企業とされていますが、令和4年10月1日から100人超規模、令和6年10月1日からは50人超規模になります。

②特定適用事業所に使用される短時間労働者に係る要件の緩和

従来、特定適用事業所に使用される短時間労働者が被用者保険の被保険者となるために必要とされてきた1年以上継続して使用されることが見込まれるという要件は不要となります。 ⇒ 令和4年10月1日施行

③個人事務所に係る適用拡大

従来、従業員数にかかわらず、任意適用事業所とされていた個人経営の法律・会計に係る業務を行う事業の事務所については、常時使用する従業員が5人以上であれば、強制適用事業所となります。具体的な対象としては、弁護士、公認会計士が例示されており、その他は政令によって具体化されます。社会保険労務士の個人事務所も、当然その対象に含まれることになるでしょう。 ⇒ 令和4年10月1日施行

2.在職中の年金受給の在り方の見直し

①在職中の老齢厚生年金受給者の年金額の定時改定

従来、厚生年金保険の被保険者が老齢厚生年金を受給している場合、その期間は被保険者期間の月数に算入されませんでした。高齢者の就業継続に対しインセンティブを与えるべく、改正により、毎年9月1日を基準日として、65歳以上の被保険者であった期間の月数を被保険者期間の月数に算入するように変更されます。その結果、10月から年金額が改定されることになります。 ⇒ 令和4年4月1日施行

②60歳台前半の在職老齢年金の支給停止基準の見直し

65歳未満の被保険者に支給する老齢厚生年金の支給停止について、65歳以上の被保険者に支給する老齢厚生年金の支給停止と同様の仕組みとします。つまり、支給停止が開始される賃金と年金の合計額の基準が、28万円から47万円(令和2年度価格)に引き上げられ るということです。 ⇒ 令和4年4月1日施行

3.受給開始時期の選択肢の拡大  

老齢基礎年金及び老齢厚生年金の繰下げ支給の上限年齢が、現行の70歳から75歳に引き上げられます。その結果、75歳で老齢基礎年金や老齢厚生年金の請求をした場合には、法定額に84%(0.7%×120)加算された額の年金が支給されることになります。  ⇒ 令和4年4月1日施行

(本稿は、2020年3月20日時点での情報となります)

社会保険労務士法人LEC代表社員
特定社会保険労務士 滝 則茂 氏

中小企業福祉事業団幹事。東京都福祉サービス第三者評価評価者。
名古屋市生まれ。中央大学法学部法律学科卒業。1989年社会保険労務士登録。2007年特定社会保険労務士付記。東京リーガルマインド主任研究員として、企業研修、職業訓練、資格取得講座などの企画、教材開発、講義を担当。2003年4月より、社会保険労務士法人LECにて、労務相談、就業規則関連業務などに従事する一方、社労士向けセミナーの講師として活躍中。

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