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業種特化社労士の視点から(第15回『自動車整備業編』)

<本田 淳也 氏>

急速に進む技術革新により激変する自動車業界
「電気自動車&自動運転」。日本の基幹産業といわれる自動車業界は今、100年に一度と言われる大転換期を迎えています。
二酸化炭素による温暖化の影響や低いエネルギー自給率を解決できるとされる「電気自動車」。現状日本は技術開発において、欧米や中国に遅れをとっていると言われます。が、自動車の輸出は年間15兆円を超える最大品目であるうえ、500万人以上が関連産業にて就業、まさに日本経済の屋台骨であります。レアメタル確保の課題もあり、官民一体で世界に挑む恰好となっているのです。
このような経緯もあり、経済産業省は、「2020年に最大で100万台の普及台数を目指す」(PHV含む)とし、2030年には新車販売に占める割合を20~30%、保有台数16%という数値を掲げています。
100年続いたガソリンエンジンが終わりを告げ、今後、電気でモーターを作動させ走行する電気自動車が増えてくるのは間違いないでしょう。ではそれによって、自動車整備業界にどのような変化があるのでしょうか。

整備士の負担増は避けられない
電気自動車はエンジンオイルやATフルード(オートマオイル)、冷却水等が不要となり、また構造上、ブレーキパッドの消耗も大幅に抑制されます。同時に関連するトラブルも無くなり、工賃・部品売上が減少するのは避けられません。
また、オイル交換を始めとした定期的にユーザーと接点を持つ機会も大幅に減少するため、いわゆる「常連客」との関わり方にも変化が求められてきます。
もうひとつ重要なのは整備士の技術的な問題。機械を中心とした知識だけではこと足りず、整備士が苦手としている電気や電子のノウハウも習得していかなければなりません。
とはいっても、全国の整備工場(認証)の約8割が従業員10人以下、そのうち約5割が5人以下という小規模事業所であり、さらには全体の半数で「整備士が不足している」といった状況です。研修時間の捻出は、今後の大きな課題となってくるでしょう。

より安全になる自動運転システムは歓迎すべきだが
近年、自動運転システムが多くの新車に搭載されはじめています。みなさんも一度は見聞きしたことがあるでしょう。このシステムは、1~5までレベル分けされており、現在実用化されているのはレベル1に相当する「自動ブレーキ」「車間距離の維持」「車線の維持」などの運転支援となります。
駐車場内での軽微な接触事故をはじめ、アクセルとブレーキペダルの踏み間違え、走行中の車両等への衝突など、数多くの物損事故を未然に防げる可能性があります。免許を取得して間もない初心者や高齢者には特に歓迎すべきシステムといえるでしょう。
事故の減少については、誰しも異論の余地はないと思います。しかしながら業界には大きな変化をもたらします。もっとも影響するのは、板金・塗装(車体整備)の分野。事故が少なくなれば、当然ながら破損やへこみで入庫するクルマが減り売上も減少。現状においても車体整備の売上は年々減っているようですが、自動運転の普及に伴い、その傾向がさらに加速するのではないでしょうか。そう考えると、特に車体整備をメインに行っている工場については、売上減少を見込んだ長期的な経営計画が必要となるでしょう。

社会問題となっている整備士不足
整備士の人数はここ数年33万人~34万人程度でほぼ横ばいです。しかしながら、整備専門学校等へ入学する若者が過去10年間で50%減少しているのです。
少子化やクルマ離れの進展、将来の選択肢の多様化などが原因として考えられますが、そのほかにも高等学校の進路担当教師などが整備業界にあまり良いイメージを持っていない、そんな理由もあるようです。「近い将来、整備不良の車が道路を走っているかも・・・」。こんな声が聞こえてくるほど、整備士不足は深刻な状況なのです。
事実クルマ屋さんの代表格といわれるディーラーでさえも、8割が整備士の採用に困っているとし、1割は実際に「採用できなかった」、さらに「一部採用できたが不足」が4割を占めています。小規模な民間工場であればなおさらです。
当然ながら整備士がいなければ整備工場は成り立ちません。今いる整備士に長く勤務してもらい、同時に若者も育てていく・・・この点に力を注いでいくことが整備工場の未来を左右するといっても過言ではないと考えています。

自動車整備士の労働環境は?
私はディーラーで整備士をしていたことがあります。労働環境をひと言でいうと、“過酷”。手は汚れる、体力も使う、夏は暑いし冬は寒い、国家資格を必要とする仕事でありながらも給与はさほど高くなく、残業代もあまり出なかったように記憶しています。
昔は“クルマが好きだから”という大前提があったため成り立っていましたが、今の若い整備士は“そこまで好きじゃない”といった方が多いように感じます。そんな状況だからこそ、適切な労務管理は不可欠であります。
週休2日が困難であれば、1年変形労働時間制を採用し、お盆や年末年始にまとめて休む、残業代の支払いが難しかったら「定額残業代」の制度導入を検討するなど、業務量や経営状態に合った労務管理が必要となってきます。
また、若い整備士の離職率が高かったら、年代にマッチした指導・研修が必須となるでしょうし、おろそかになりがちな労災事故への事前対応や労働安全衛生法の基礎知識も欠かせません。いずれにしても整備士が不足している状況を考えると、“従業員満足度の向上”に努めるべきだと感じています。

なぜ自動車整備業界に注力することになったか
20代の頃から、日々クルマと向き合ってきました。自動車短大で基礎知識を、ディーラーでは応用実務を学び、四駆専門誌ではクルマの魅力に迫った記事を執筆しました。二級整備士を持っている社労士はあまりいません。ディーラー勤務経験のある社労士も少ないでしょう。自動車雑誌で記事を書いていた社労士はもっと少ないと思います。
業界の知識や経験があると、日々顧問先であるクルマ屋さんの経営者や整備士とやり取りをしていても、ひと通りの内容は把握できますし、自然と突っ込んだ話にもなったりします。マニアックで関係のない会話になってしまうのがたまにキズですが、それでも業界の基礎知識を活用した方が、会社
をより深くサポートできるのではないでしょうか。
正直なところ、意識的に自動車整備業に特化しているワケではないものの、それでもなぜかクルマ屋さんの割合が高くなっているのが現状であります。

社労士の役割とは…
技術革新が急速に進み、なおかつ整備士が不足している…今後、整備業界には変化が求められてきます。同時に“ひと”の専門家である社労士が担う役割も増えてくるのではないでしょうか。前述した労務管理を中心にしつつ、できれば経営全般や業界の動向といったところまでアドバイスできれば
望ましいと考えています。
私はクルマ屋さんや自動車整備業界の労務管理について、たまに原稿を書くことがあります。その過程で感じた事、クルマ屋さんに必要な事とは一体なにか・・・。
それは「ひとを育てる」という労務管理の重要性であります。同時に経営者の意識にも変化が求められるケースもあるでしょう。意外と外部から拝見した方が客観的に物事を捉えられる場合もあり、社労士はそのような立ち位置にいると思っています。
日常業務で手一杯だとは思いますが、できる限り業界の基礎知識を身につけていただき、会社や経営者、従業員の皆さんを力強くサポートしていただけると嬉しい限りです。

※本内容は、2019年2月発刊時点の情報となります。

本田社会保険労務士事務所
社会保険労務士 本田 淳也 氏

1975年、青森県深浦町生まれ。北海道自動車短期大学を卒業後、国家二級自動車整備士を取得し、札幌市内のディーラーにメカニックとして勤務。
その経験を活かし、四輪駆動車専門誌「4×4MAGAZINE」編集部で数多くの記事を執筆する。帰郷後、社労士事務所、税理士事務所勤務を経て、平成26年1月開業。
経営全般の分析を得意とし、そこから考えられるアイディアや解決策を経営者と共に模索する伴走型の労務管理が特徴的。「事業はひとなり」を胸に抱き、顧問先企業を中心に働く人の大切さを伝え続けている。21あおもり産業総合支援センター専門家。

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