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法令改正最前線(第35回『働き方改革関連法案(その3)』)

<滝 則茂 氏>

今回は、時間外労働の上限規制の基軸となる「三六協定に関する法規制」について、法案要綱をベースに解説することとします。

1.基本的なコンセプト――原則として、「法律」で規定する

三六協定は、労働基準法36条に根拠を有する労使協定ですが、現在、協定に関する具体的な規制は、省令(労働基準法施行規則)や厚生労働省告示(いわゆる「限度基準」)に規定されています。今回の改正では、この点にメスを入れ、協定に関する基本事項は、原則として、「法律」(労働基準法)で定めることとされています。

2.協定事項の見直し

協定に盛り込むべき事項について、たとえば、労基則16条で1日・1日を超える一定期間(限度基準2条で、1日を超える一定期間は、1日超3箇月以内の期間・1年間とされている)について延長可能な時間を定めるとされていますが、実務の現状を踏まえ、1日・1箇月・1年間について延長可能な時間を定めることにするなどの見直しが予定されています。また、時間外・休日労働を適正なものとするために必要な事項について、省令で定めるべきものとされています。具体的には、健康確保措置、限度時間を超える時間外労働が行われた場合の割増賃金率などが、協定で定める事項として、労基則に規定される見込みです。

3.限度時間に関する見直し

<原則基準> 時間外労働の限度時間については、現在、いわゆる「限度基準」で、1月45時間、1年360時間という原則的な上限が規定されています。この基準については、「法律」に格上げされ、罰則付きで履行が強制されることになります。

<特別条項> 現在、長時間労働の是正という観点から問題視されているいわゆる「特別条項」については、どうなるのでしょうか。改正後も、労使の合意による特別条項の存在は認められますが、以下に指摘するような一定の歯止め(上限時間)が導入されます。また、特別条項に関する規制も、「法律」に明記されることになります。

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  • ※特別条項に関する歯止め
  • ①1箇月の時間外労働及び休日労働は、100時間未満
  • ②1年につき時間外労働させることができる時間は、720時間以内
  • ③時間外労働が1月45時間を超えることができるのは、1年について6箇月以内
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上記のうち、①については、過労死ラインぎりぎりであり、規制として緩すぎるのでないのかという労働側からの批判が強いところです。また、②については、時間外労働のみを念頭に置いた規制であるため、休日労働が含まれていないことが批判されています。 なお、もう一つ長時間労働に対する歯止めとして、2~6箇月のそれぞれの期間における時間外労働及び休日労働の1箇月当たりの平均時間は80時間以内という規制が設けられる予定ですが、これは、三六協定を規制するものとはいえません。 4.指針の策定と行政指導 厚生労働大臣は、時間外労働・休日労働を適切なものとするため、三六協定で定める時間外労働・休日労働について留意すべき事項、時間外労働に係る割増賃金の率などの事項について、指針を定めることができるとされています。また、この指針に関しては、行政官庁が、三六協定の当事者に対し、必要な助言・指導を行うことが予定されています。

 

※本内容は、2018年2月発刊時点の情報となります。

社会保険労務士法人LEC代表社員
特定社会保険労務士 滝 則茂 氏

中小企業福祉事業団幹事。東京都福祉サービス第三者評価評価者。
名古屋市生まれ。中央大学法学部法律学科卒業。1989年社会保険労務士登録。2007年特定社会保険労務士付記。東京リーガルマインド主任研究員として、企業研修、職業訓練、資格取得講座などの企画、教材開発、講義を担当。2003年4月より、社会保険労務士法人LECにて、労務相談、就業規則関連業務などに従事する一方、社労士向けセミナーの講師として活躍中。

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