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法令改正最前線(第34回『働き方改革関連法案(その2)』)

<滝 則茂 氏>

今回は、パートタイム労働法改正の方向性について、法案要綱をベースに解説することとします。

1.基本的なコンセプト――ガイドライン案をふまえ、同一労働同一賃金を推進

従来、パートタイム労働法(正式名称:短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律)は、もっぱら、短時間労働者に関する法律でした。ところが、法案要綱では、短時間労働者に加え、有期雇用労働者についても法律の適用対象としています。 これは、「正社員との間の均等・均衡処遇の推進に関しては、短時間労働者と有期雇用労働者をワンセットで捉えていくべきである」との考えによるものだと思われます。既にこのような考え方は、昨年の12月20日に公表された「同一労働同一賃金ガイドライン案」で採用されています。このガイドライン案の前文に、「今後、この政府のガイドライン案をもとに、法改正の立案作業を進め、……」というフレーズがありますので、まさに、今回のパート労働法改正は、ガイドライン案の延長線上にあるものとして位置付けることが可能です。

2.法律の名称、定義規定(法2条)の見直し

<法律の名称> 有期雇用労働者も適用対象に取り込まれることに伴い、法律の名称(題名)も「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」に変更されることとなります。

<定義規定> 「有期雇用労働者」と「短時間・有期雇用労働者」という2つの用語の定義が追加されます。

  • ●「有期雇用労働者」→事業主と期間の定めのある労働契約を締結している労働者
  • ●「短時間・有期雇用労働者」→短時間労働者及び有期雇用労働者 また、「短時間労働者」の定義規定が一部変更されます。従来、短時間労働者は、その者と同一の事業所に雇用される通常の労働者に比し、1週間の所定労働時間が短い者を意味していましたが、法案要綱では、同一の事業主に雇用される通常の労働者が比較の対象とされています。たとえば、A支店の従業員全員が短時間勤務だが、B支店には正社員がいるといった場合、改正後であれば、A支店の従業員は短時間労働者の定義に該当することになります。

3.均等・均衡待遇に関する諸規定(法8条~12条)の見直し

いずれの規定についても、対象は、短時間・有期雇用労働者になります。それに加え、たとえば、以下のような変更が盛り込まれており、実効性の強化が図られています。 <待遇の原則に関する規定(法8条)の見直し> 同一労働同一賃金に関する基本規定ともいうべき条文ですので、要綱の内容をそのまま紹介します。 「事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において、当該短時間・有期雇用労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下、「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならないものとすること。」 現行の法8条と類似の内容ですが、現行法では、短時間労働者の待遇が通常の労働者と相違する場合に、その相違が「不合理と認められるものであってはならない」という規定の仕方になっており、事業主に対する義務という観点が曖昧になっています。これに対し、改正法は、事業主は、「不合理と認められる相違を設けてはならない」という形の規定であり、事業主に対し、禁止を義務付ける明確な規定となっています。 <福利厚生に関する規定(法12条)の見直し> 従来は、事業主の配慮義務(利用の機会を与えるように配慮しなければならない)を定めた規定でしたが、より明確な義務規定(利用の機会を与えなければならない)に変更されます。

※本内容は、2017年12月発刊時点の情報となります。

社会保険労務士法人LEC代表社員
特定社会保険労務士 滝 則茂 氏

中小企業福祉事業団幹事。東京都福祉サービス第三者評価評価者。
名古屋市生まれ。中央大学法学部法律学科卒業。1989年社会保険労務士登録。2007年特定社会保険労務士付記。東京リーガルマインド主任研究員として、企業研修、職業訓練、資格取得講座などの企画、教材開発、講義を担当。2003年4月より、社会保険労務士法人LECにて、労務相談、就業規則関連業務などに従事する一方、社労士向けセミナーの講師として活躍中。

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