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法令改正最前線(第31回『勤務間インターバル制度導入に向けての動向』)

<滝 則茂 氏>

1.勤務間インターバル制度とは?

勤務間インターバル制度とは、「終業時刻と翌日の始業時刻との間に一定時間の休息を確保する」仕組みであり、労働時間の設定に関する問題として位置付けることができます。このような制度は、我が国ではあまり普及していませんが、EU諸国では、既に制度化が進んでいます。 労働時間に関しては、単に長さ(上限)の規制に留まらず、勤務間の十分な休息が確保されないと、従業員の健康破壊につながりかねないとの問題意識から、近年、勤務間インターバルへの関心が高まっています。さらに政府も、「働き方改革」の一環として、この制度の普及に向けた環境整備に注力しています。

2.「働き方改革」のメニューとしての勤務間インターバル制度

3月28日に働き方改革実現会議で決定した「働き方改革実行計画」によれば、「罰則付き時間外労働の導入など長時間労働の是正」という項目の中で、勤務間インターバル制度に関する政府の方針が示されています。そのポイントは、以下のとおりです。

  • ①制度の法制化
  • 労働時間設定改善法を改正し、一定時間の休息の確保に関する努力義務を課す旨の方針が示されています。実行計画に添付されているロードマップ(工程表)によれば、遅くとも2018年度初頭までに、改正法案を国会に提出することを目指しています。
  • ②有識者検討会の立上げ
  • 制度の普及促進に向け、労使関係者を含む有識者検討会を立ち上げるとの方針が示されています。この検討会は、既に4月28日に設置されており、5月16日に第1回会議が開催されました。
  • ③助成金の活用、好事例の周知
  • 制度を導入する中小企業への助成金の活用、好事例の周知を通じ、取り組みを推進する旨の方針が示されています。
  • ●助成金については、職場意識改善助成金の新たなメニューとして、「勤務間インターバル導入コース」が既に導入されています。この助成金を受給するためには、各種要件をクリアすることが必要ですが、休息時間数については、「9時間以上」であることが要件とされています。また、休息時間数が「11時間以上」になると、助成の上限額が増加する仕組みになっています。
  • ●好事例については、厚生労働省HPの「勤務間インターバル」サイトの中で、具体的な導入事例(5月22日現在、7社の事例)が紹介されています。

3.今後の見通し

努力義務を設ける法改正は、時間外労働の上限に関する法改正とワンセットで提案されると思われます。順調にいけば、来年の通常国会で改正法案が成立し、2019年4月から施行されることになります。 勤務間インターバル制度に関しては、努力義務の規定が設けられる予定ですので、必ずしも法改正への対応が企業に求められる訳ではありません。ただし、労務リスクの低減という観点からすると、勤務間インターバル制度の導入は、従業員の健康確保に対する取組姿勢を示すものとして、労災民事訴訟等の局面においては、企業に有利に働く要因になると思われます。また、従業員の募集に際しても、アピール材料になるでしょうから、今後、制度の導入に向けて社労士が事業主に働きかけるメリットは、決して小さくはないと考えます。

 

※本内容は、2017年6月発刊時点の情報となります。

社会保険労務士法人LEC代表社員
特定社会保険労務士 滝 則茂 氏

中小企業福祉事業団幹事。東京都福祉サービス第三者評価評価者。
名古屋市生まれ。中央大学法学部法律学科卒業。1989年社会保険労務士登録。2007年特定社会保険労務士付記。東京リーガルマインド主任研究員として、企業研修、職業訓練、資格取得講座などの企画、教材開発、講義を担当。2003年4月より、社会保険労務士法人LECにて、労務相談、就業規則関連業務などに従事する一方、社労士向けセミナーの講師として活躍中。

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