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法令改正最前線(第30回『勤務間インターバル制度導入に向けての動向』)

<滝 則茂 氏>

今回は、現在、国会に上程されている介護保険法の改正案を取り上げます。2月7日に提出された法案の正式名称は、「地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案」で、介護保険法のほか、医療法、社会福祉法等の改正も内容に含まれています。 介護保険法については、介護保険事業計画(市町村が策定する介護保険の保険給付の円滑な実施に関する計画)の更新サイクルに合わせ、3年に1度、制度の見直しを行っており、今回の法改正も、それに沿ったものです。 今回の法改正の目的は、①地域包括ケアシステムの深化・推進、②介護保険制度の持続可能性の確保という2点に集約することができます。

1.地域包括システムの深化・推進

地域包括ケアシステムというのは、近年、厚生労働省が好んで使用している言葉であり、地域の実情に応じて、高齢者が、可能な限り、住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した日常生活を行うことができるよう、医療、介護、介護予防、住まい及び自立した日常生活の支援が包括的に確保される体制を意味しています。 この趣旨に沿った改正事項は多岐にわたっていますが、本稿では、「新たな介護保険施設の創設」について紹介します。要介護者に対し、「施設サービス」を提供することができる介護保険施設としては、従来、①介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、②介護老人保健施設、③介護療養型医療施設(介護療養病床)の3つ形態がありました。今回の改正法案には、新たな形態として、「介護療養院」と称する施設を創設することが盛り込まれています(平成30年4月1日施行予定)。この施設は、今後の増加が見込まれている慢性期の医療・介護ニーズへの対応のため、「長期療養のための医療」と「日常生活上の世話(介護)」を一体的に提供するものであり、介護保険法上の介護保険施設である一方、医療法上の医療提供施設としても位置付けることになっています。日常的な医学的管理が必要な重介護者を念頭に置いた施設です。 なお、介護療養型医療施設については、平成29年度末までの経過措置として存続が認められていました。今回の改正で、「介護療養院」が創設されることになったため、その必要性は低下すると思われますが、さらに6年間延長が認められる見込みです。

2.介護保険制度の持続可能性の確保

ここでは、①自己負担が2割の者のうち、特に所得が高い層の負担割合を3割に引上げ、②介護納付金への総報酬割の導入が改正事項とされています。 このうち、①については、そもそも対象となり得る者が少ない(受給者全体の約3%)のに加え、高額介護サービス制度による上限(44,400円)があるため、社会的影響は少ないものと考えられます。 他方、②は、第2号被保険者(40歳~64歳の医療保険加入者)の保険料に関する見直しであり、現役世代の従業員と事業主の負担にかかわる内容を含んでいます。第2号被保険者の保険料については、医療保険者が介護納付金として負担しており、各医療保険者が、被保険者の頭数に応じて納付金を負担する方式(加入者割)が採用されています。これを「被用者保険間では報酬額に比例して負担する方式(総報酬割)に変更する」というのが、法改正の内容です。要は、被保険者の報酬水準が高い医療保険者においては保険料引上げ、逆に被保険者の報酬水準が低い医療保険者では保険料引下げにつながるということで、報酬水準が比較的低い協会健保の関係者にとっては朗報といえるでしょう。 この総報酬割への変更は、本年8月の介護納付金から実施される予定になっています。ただし、急激な変動を避けるべく、平成30年度までの総報酬割分は全体の「2分の1」、平成31年度は「4分の3」とする激変緩和措置が盛り込まれています。

※本内容は、2017年4月発刊時点の情報となります。

社会保険労務士法人LEC代表社員
特定社会保険労務士 滝 則茂 氏

中小企業福祉事業団幹事。東京都福祉サービス第三者評価評価者。
名古屋市生まれ。中央大学法学部法律学科卒業。1989年社会保険労務士登録。2007年特定社会保険労務士付記。東京リーガルマインド主任研究員として、企業研修、職業訓練、資格取得講座などの企画、教材開発、講義を担当。2003年4月より、社会保険労務士法人LECにて、労務相談、就業規則関連業務などに従事する一方、社労士向けセミナーの講師として活躍中。

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