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ヒストリーof社労士

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 都保険部の要綱案をめぐる都保険部と東京労働基準局の確執は、協会が自主的に受託事業所一覧表を作成、社会保険事務所へ提出することとなり、一応、大きな混乱は避けることができた。協会としても、要綱の実施に危惧不安感はあったが、社会保険行政への協力という大義名分の前に反対を唱えることができなかった、というのが本音であったと思われる。 
 しかし、都保険部は追い討ちをかけるように社労士対策を打ち出してきた。「社会保険労務士業務取扱要綱」(案)である。
 これは社労士が取り扱う業務について、その書類に所定の印判を押すことにより、社会保険関係の諸申請、手続き、届出などの際、添付書類の省略、各証明書添付の省略、一部調査の免除  など一連の優遇措置(メリット)を講じようというものであった。
 いわゆる社労士の”メリット”といわれるこれらの優遇措置は、各事業所の事務負担の軽減をはかるとともに、事実確認を社労士に委任することによって社会保険事務所の行政簡素化を進め、さらにこのことは社労士の社会的地位の向上にもつながり、社会保険行政上、一石三鳥の効果が期待できると都保険部は評価していた。
 また、社会保険事務所長の権限で、新規適用事業所の新規加入事務を社労士に積極的に行わせることや、同事務所内に「社会保険相談コーナー」を設けて新規適用、被保険者報酬月額算定基礎届時の相談に応じたり、被保険者証更新時の検印ができることなども盛り込まれている。
 特筆すべきは、社会保険事務所が事務の委託を希望する事業所を、所轄の開業社労士に斡旋できるという一項目である。
 社会保険行政の前面に社労士を押し出し、社労士の権威向上をはかると同時に、適用事業所に対するサービス向上を狙った都保険部の積極的な姿勢は、保険士会所属の社労士にとっては願ってもない優遇措置だが、協会所属の社労士にとっては”差別”と映ったのは当然であった。
 東京労働基準局(八木高生局長)は、都保険部の社労士指導監督要綱案に強く抗議するとともに、管内18の監督署に「社会保険労務士研究会」を設けると発表した。この研究会設置の主旨は、開業社労士の交流の場を設け、資質の向上をはかり、労働基準行政への協力を求める、の3点が骨子となっており、いわば都保険部が打ち出した優遇措置に対して労働基準行政という立場で巻き返しをはかることが研究会構想の基本にあった。

 

 関西でも大阪労働基準局(広政順一局長)が管内の開業者を対象に各監督署単位に研究会を発足させた。これまでの在阪社労士6団体協議会のメンバーに、新たに大阪府中小企業労務協会(社会党系)を参加させ、協議会を中心に管内開業社労士1、148人のまとめ役をかって出た。
 この東京・大阪にように労働基準局中心に研究会設置の動きは次第に地方各県に波及していくが、このことは労務管理士協会が解散して開業者中心の新団体結成の方針を固めたこと、また新団体設立には労働省と出先機関に協力を求めたことなど、協会の意向を踏まえて労働省サイドの新しい開業者団体づくりに乗り出したのである。
 直接的、間接的にせよ、労働省が協会に代わる新団体をつくる決意を固めたわけだが、団体構成員に開業社労士を中心に据える構想も既にこの時点で確固たるものになり、本省から都道府県労働基準局に対し指令が発せられたことは想像に難くない。
 都保険部が投じた社労士対策問題は、団体の統合どころか団体間の反目、さらには役所同士の対立という形で熾烈さを増して行き、日本社会保険労務士会(日社連)の誕生へと進展していく。

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