| 近年、政治家や医師などについて、各人の「説明責任」が問われる場面が広がりつつあります。では、企業の労務管理の分野ではどうでしょうか。
従来、この分野では、企業の「人事権」を背景に「人事の秘密」という言葉が横行していたことからも分かるように、事業主の説明責任は、さほど重視されてきませんでした。ところが最近では、法令の規定の中にも、事業主の説明義務を明記したものが登場する(改正パート労働法13条)など、この問題に対する風向きが変わりつつあります。
労務管理における事業主の説明責任といった場合、大きく2つの場面に分類することができます。その一つ目は、個々の労働者の処遇に関わる説明責任です。これは、成果主義・能力主義的な考え方の浸透、働き方の多様化の進行に伴い、労務管理の個別化が進んでいる状況に対応するものと考えることができます。二つ目は、制度の改定に伴う説明責任です。こちらは、職場の従業員全般(または特定のグループに属する従業員)を対象とするもので、就業規則の不利益変更の問題を検討する際の一つのファクターとしても位置付けられています。
いずれも、企業の厳しい経営環境を背景に処遇の見直しを図っていく際に雇用主としての姿勢が問われる場面です。ここでの対応を誤ると、従業員のモラールの低下を招くことでしょう。企業の経営の現状や人事考課の結果に関する情報を適切に開示し、従業員との信頼関係の維持につながる説明が求められます。
次回は、改正パート労働法で導入された、パートタイマーの処遇に関わる事業主の説明責任について、述べることとします。
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