| 今回(本テーマの最終回)は、「労働契約法の制定」を素材として、述べることとしますが、本題に入る前に、前回のコラムで取り上げた「最低賃金の見直し」について補足します。
最低賃金法改正をふまえた地域別最低賃金の抜本的な見直しは、来年度以降に持ち越されました。ただ、中央最低賃金審議会が先ごろ答申した今年度の見直し案(10月実施予定)によると、全国平均で14円アップという従来よりも大幅な見直しとなっており、法律改正を多少なりとも先取りしようとする動きを見て取ることができます。
ここから、本題に入ります。当初、厚生労働省が描いていたシナリオからすれば、労働契約法の制定は、今回の労働法制見直しの最大のテーマとなる予定でした。ところが、個々の論点につき労使間の意見の隔たりが大きく、最終的に国会に上程された法律案は、これといったインパクトに欠けるものと評価せざるを得ません。条文数は全部で19条、定着した判例法理(たとえば、懲戒権濫用法理)など、労務管理上のいわば常識の条文化が目立ちます。「労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。」(法8条)といった条文がありますが、こんなことは、労働関係が当事者間の契約であれば、当然の事理です。
では、この法律案のままでは、次期国会で成立したとしても、社労士実務とさほど関わりのないものになってしまうのでしょうか。たしかに、労務部門が社内で確固たる地位を築いている大企業の場合は別でしょうが、中小企業においては、私たち労務の専門家から見れば当たり前と思える事項でも、経営者に理解されていないことが往々にしてあります。そのような事項を説明する際に法律の条文があれば、説明が容易になるのであり、日常的な労務管理指導の局面では少なからぬメリットがあると考えます。
内容面の不十分さは否めませんが、労働契約法案は、労働基準法と並ぶ、労務管理に関する基本法の制定をめざすものであり、早期の成立が待たれます。
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