「焦眉の急の中小企業対策を望む」

理事長 川口 義彦

 東日本大震災で被災されたみなさま、そして犠牲となられたみなさまに謹んでお見舞いとお悔やみを申し上げます。  
 政権交代から三年目の夏を迎えた。言わずもがな節電の中、猛暑が続き暑さは衰えを知らない。裏腹に、景況は衰えたきりで皮肉にも冷え込みたるや円高に象徴される如く底なしである。
 そんな中、8月5日、アメリカの格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は、米国債の長期信用格付けを現在最高水準の「トリプルA」から「ダブルAプラス」に一段階引き下げたと発表した。続いて8月8日にはG7財務相・中央銀行総裁が、市場安定化を目指し、共同声明を出したが、同日のニューヨーク株式市場は一時、前週末比385ドル安となってしまった。これにリンクして、アジア・ヨーロッパ市場も大幅に下げるなど世界同時株安、同時にドル売り円買いの流れが止まらず、円相場は1ドル=76円台の攻防で超円高が続くなど異常事態を迎えている。2008年秋のリーマン・ショックのような金融危機の再燃が危惧されるどころか、現実味を帯びそうな様相を呈してきている。翌日には反発もあったが・・・。
 また、8月9日には米連邦準備制度理事会(FRB)が、実質ゼロ金利を2013年半ばまで続けると公約した。現在のアメリカは、もはや「失われた10年」の途中にある、すなわち、ゼロ金利のまま低成長から抜け出せない「ジャパナイゼーション(日本化)」が進行していると指摘されている。何れにせよこうした流れは、先進国経済の行き詰まりを示しているのではないだろうか。この先、経済成長が望めない中で、如何にしてこの危機的状況から脱却できるのか。日本経済も恐い入り口に差し掛かる、いや入り込んでしまったのではないかと案ずるばかりである。
 さて、7月4日に東京23区内の中小企業約2,500社を対象に企業活動への震災の影響を調査した東商のデータによれば、震災から2カ月後の調査時点でも約2割超の企業(特に建設資材・紙・印刷関連製品の分野で割合が高い)が、材料調達難や仕入れ価格高騰などの影響を受け、また放射能汚染の風評被害などの影響では、約4割の企業(高い順にサービス業・製造業・卸売業)が、イベント・催事の中止や延期による売上減少、製造業・卸売業では輸出相手国の輸入規制などの影響が依然として続いているようだ。
 東日本大震災という未曾有の事態を受け、まずは復旧・復興が最優先課題であるが、政府が国民に負担増を目論む平成24年度税制改正においては、経済成長のためにあらゆる手段を総動員し、中小企業の発展なくして経済成長や雇用の創出は実現不可能という大前提に立って、中小企業への支援拡充を強く打ち出すべきである。もちろん、デフレ解消や景気回復の状況などに最も細かい配慮が必要であることは言うまでもない。社会保障と税の一体改革に於ける消費税引き上げのコンセンサスも重要なポイントであろう。
 この巻頭言をお読み頂く頃、政権交代後、三人目の宰相を迎えていることだろうが、政権の座を死守するための「脱原発」のお題目は、より一層、日本経済を疲弊の道へと誘ってしまった。権力闘争を繰り返しているような姿を国民は望んでいない。それを看過している野党もだらしな過ぎる。
 今更であるが、経済は生き物である。現状の政治を憂えているのは即刻止めて、焦眉の急の中小企業対策を望みたい。それこそが、国民が主役を標榜する民主党政権の基本ではないだろうか。

「平成23年度定例総会(総代会)開催」

 平成23年度(第38回)定例総会(総代会)が、去る6月29日に開催されました。
 定例総会(総代会)では、平成22年度事業報告、決算報告、監査報告、及び平成23年度事業計画、予算案等が提案され、審議の結果、全ての審議について満場一致で可決・承認されました。

「平成22年度事業報告」 自平成22年4月1日 至平成23年3月31日

 平成22年度事業については、会員各位のご協力とご理解のもとに各事業とも計画した事業内容に基づいて適切な推進を行い、概ねその目標を達成することができた。
 事業の推進に際しては、先ず第1に労働保険適用促進業務の推進を掲げ、未適用事業所に対する積極的な加入推奨を行い、併せて労働保険制度の周知徹底及び啓蒙普及などの他あらゆる機会を捕らえて積極的な適用促進活動を展開した。
 第2に、労働保険料等滞納事業所の納付促進については、毎期の保険料請求の都度、納付実績を参照して個別事業所毎の実情に合致したきめ細かな配慮を行い、保険料収納率の向上に努めたところである。また、徴収困難である事業所については、事業主との協議による納付計画の立案等、密な連携により保険料収納率の向上を図ったところである。
 第3には、労働保険年度更新業務の円滑な推進を掲げ、過去の実績を踏み台にさらなる相乗効果を狙い、加えて第4にはサービスの拡充およびPRにより新規会員の加入促進を取り上げることとした。
なお、会員事業所に対する法改正等情報の提供や、他の異業種提携企業との連携強化による幹事社労士に対する支援助成、広範な分野における業務研修会の開催などを通じて 中小企業等に対する支援活動をより幅広く有益なものとして積極的な展開を実施したところである。
 一方、特に関係行政機関及び上部団体等との密接な接触と連絡を図るなど、その連携強化に努めることにより、適時適切な指導を受けて業務の適正且つ効率的な運営がより一層推進され、会員事業所との信頼関係構築が深まるよう努めてきたところである。
 他方、本年3月の未曾有の大震災は、中小零細企業のみならず大企業に波及するほどの災禍を生み、受注・売上の減少、資材の調達難や流通の停滞等により、中小企業の業況や資金繰りが急速に悪化したところではある。
 その点が本年度以降どのような影響を及ぼすか未知の部分はあるが、前年度は建設業を中心とした企業に対する積極的な業務展開により、委託事業所数については前年度実績を上回る結果となった。

「平成23年度事業計画」 自平成23年4月1日 至平成24年3月31日

 我が国の景気は、持ち直しの動きが見受けられたが、平成23年3月に発生した東日本大震災により大幅に悪化し、多くの中小企業が倒産、廃業を余儀なくされた。
 また、景気低迷、円高の進行や原油価格の高騰、デフレの進行など従前からある問題に加えて、震災の影響による、エネルギー供給制約、国内需要の収縮などにより、問題は更に深刻化していくと考えられる。
 このような景況の下、雇用情勢も厳しい状況となっている。平成22年度平均の有効求人倍率は0.56倍と過去最悪となった前年度の0.45倍を0.11ポイント上回ったものの、完全失業率は、平成22年度平均で5.0%と前年に比べ0.1ポイント低下した(岩手県、宮城県、福島県を除く)。
 平成22年平均の完全失業者(334万人)のうち,失業期間が1年未満の者は減少傾向であるのに対し、失業期間が1年以上の者は増加傾向にある。なお、実数は比較可能な平成14年以降で最多、増加幅は比較可能な15年以降で最大となった。
 また、雇用者(役員を除く)に占める非正規の職員・従業員の割合は、平成22年平均で34.3%と、前年に比べ0.6ポイントの上昇となり,比較可能な平成14年以降で最高となった。現況を鑑みるに正規雇用拡大の見通しは立たず不透明感が拭えない。このように不安定な環境への迅速な対応こそが現在に於ける緊急かつ重要な課題だといえる。
 しかし、中小企業のみならず、日本全体に甚大な被害を及ぼした震災の影響により景況は非常に厳しい情勢にある。そのような状況においては、事業環境の変化に翻弄されないよう、絶えず情報を入手して、即座に適応しながら、小回りの利いた的確な情勢判断、そして迅速果断に行動し、危機管理態勢を備えて果敢に活路を見出すことで自ずから道は開けるものといえよう。
 新年度は、この情勢展望のもとに次の事業を策定し、関係する行政機関及び団体との密接な連携と適切な指導助言を得て、これら事業の推進を図り、以って会員企業に対し当事業団が与えられている使命と役割貢献を果たしていかなければならない。

「新法令情報」 (※注)平成23年7月26日時点の情報に基づいて作成しています。

<情報提供・・SBIビジネス・ソリューションズ>

これまで成立した法令等についてご紹介します。なお、法令等の詳細については、各省庁等のホームページアドレスを掲載していますので、そちらでご確認ください。

■雇用促進税制の創設

 公共職業安定所では、雇用促進税制の適用を受けるために必要な手続きである「雇用促進計画」提出の受付を、8月1日から開始しました。雇用促進税制は、企業が、前事業年度に比べ10%以上かつ5人以上(中小企業は2人以上)従業員を増加した場合、増加した従業員数に20万円を掛けた金額を、一定額を限度に税額控除できる新制度です。

T.適用要件
 ・事業年度中に雇用保険一般被保険者の数を5人(中小企業は2人)以上、かつ、10%以上増加させること。
 ・当事業年度及び前事業年度中に事業主都合による離職者がいないこと。
 ・当事業年度における「支払給与額」が、前事業年度における支払給与額よりも、一定以上増加すること。
 ・政令で定める事業の事業主であること。

風俗営業等を営む事業主ではないこと:「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」に定められている風俗営業および性風俗関連特殊営業(キャバレー、ナイトクラブ、ダンスホール、麻雀店、パチンコ店など)



U.要件確認
 法人企業が、制度の適用を受けるための要件は、以下のとおりです。
 (1)事業年度開始後2ヶ月以内に目標の雇用増加数等を記載した雇用促進計画を公共職業安定所に提出する
  注:平成23年度については、雇用促進計画の受付開始が8月1日となりました。
 (2)事業年度終了後2ヶ月以内に公共職業安定所より雇用促進計画達成状況の確認を受ける
 (3)その際交付される達成状況を確認した旨を記載した書類の写しを確定申告書に添付する

V.措置内容
 雇用増加人数1人当たり20万円の税額控除(当期の法人税額の10%(中小企業は20%)を限度)

W.適用期限
 ・法人:平成23年4月1日から平成26年3月31日までの間に開始する各事業年度
 ・個人:平成24年1月1日から平成26年12月31日までの間の各年

平成23年6月30日法律第82号「現下の厳しい経済状況及び雇用情勢に対応して税制の整備を図るための所得税法等の一部を改正する法律」
参照ホームページ
[厚生労働省]http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudouseisaku/koyousokushinzei.html
[国税庁] http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/hojin/kaisei_gaiyo2011/01.htm

「法令最前線」 (※注)平成23年6月24日時点の情報に基づいて作成しています。

<情報提供・・SBIビジネス・ソリューションズ>

法令最前線では、国会へ提出された法案及び各省庁の審議会、分科会及び研究会等で審議・検討されている事案について、その概要をご紹介しています。

■地球温暖化対策基本法制定について

 地球温暖化対策を推進するため地球温暖化対策に関し基本原則を定め、国、地方公共団体、事業者及び国民の責務を明らかにするとともに、温室効果ガスの排出の量の削減に関する中長期的な目標を設定し、地球温暖化対策の基本となる事項を定めることを目的として国会で審議されています。

(1)

基本原則

 

地球温暖化対策として、次の原則を定める。

 

国際的協調の下に積極的に推進すること。

 

地球温暖化の防止等に資する産業の発展及び就業の機会の増大、雇用の安定化が図られるようにすること。

 

地球温暖化の防止等に資する研究開発・成果の普及が図られるようにすること。

 

地球温暖化の防止等に資する産業の発展及び就業の機会の増大、雇用の安定化が図られるようにすること。

 

生物の多様性の保全、防災、食料の安定供給の確保、エネルギーに関する施策等に関する施策との連携を図ること。

 

経済活動・国民生活に及ぼす効果・影響についての理解を得ること。等

(2)

責務

 

国、地方公共団体、事業者及び国民の責務を定める。

 

事業者の責務:事業者は、その事業活動に関し、温室効果ガスの排出の抑制等のための措置(他の者の温室効果ガスの排出の抑制等に寄与するための措置を含む。)を講ずるよう努めるとともに、国及び地方公共団体が実施する地球温暖化対策に協力しなければならない。

 

国民の責務:国民は、その日常生活に関し、温室効果ガスの排出の抑制等のための措置を講ずるよう努めるとともに、国及び地方公共団体が実施する地球温暖化対策に協力しなければならない。

(3)

温室効果ガスの排出の量の削減に関する中長期的な目標

 

温室効果ガスの排出量について、すべての主要国による公平かつ実効性のある国際的な枠組みの構築及び意欲的な目標の合意を前提として、2020年までに1990年比で25%削減する。また、2050年までに1990年比で80%削減する。

 

再生可能エネルギーの供給量について、2020年までに一次エネルギー供給量に占める割合を10%に達するようにする。

(4)

地球温暖化対策の基本となる事項

 

基本計画>
地球温暖化対策の総合的かつ計画的な推進を図るため、基本計画を策定する。

 

基本的施策>
国内排出量取引制度の創設、地球温暖化対策のための税の検討その他の税制全体の見直し、再生可能エネルギーに係る全量固定価格  買取制度の創設という主要な3つの制度の構築に加え、原子力に係る施策、エネルギーの使用の合理化の促進、交通に係る施策、革新的な技術開発の促進、教育及び学習の振興、自発的な活動の促進、地域社会の形成に当たっての施策、吸収作用の保全・強化、地球温暖化への適応、国際的協調のための施策等について定める 。

(5)

施行期日

公布の日から施行する。ただし、(3)のうち中期目標については、政令で定める日から施行する。


■希望者全員の65歳までの雇用確保を提言

 少子高齢化が進み、公的年金支給開始年齢(報酬比例部分)の65歳引上げが開始される平成25年度を目前に控え、高齢者が長年培った知識や経験を活かして働くことができ、生活の安定を図ることができる社会の実現が希求されています。そこで、厚生労働省では、高年齢者の雇用・就業機会の確保のための総合的な対策が検討されています。

【基本的考え方】

 


現状の課題>
少子高齢化の進展による労働力人口の減少が見込まれる中、経済社会の活力を維持し、より多くの人々が社会保障制度などの支え手となりその持続可能性を高めるため、高年齢者の知識や経験を経済社会の中で有効に活用することが必要。

 

現行の年金制度に基づく平成25年度からの老齢厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢の引上げを目前に控える中、制度上、65歳まで希望者全員の雇用を確保することとなっていないため、無年金・無収入となる者が生じる可能性があり、雇用と年金との接続が課題。


今後の高年齢者雇用対策の方向性>
中長期的には、意欲と能力のある高年齢者が可能な限り社会の支え手として活躍できるよう、年齢にかかわりなく働ける「生涯現役社会」を実現する必要がある。

当面は、現行の年金制度の下で雇用と年金を確実に接続させるため、雇用される人の全てが少なくとも65歳まで働けるようにするとともに、特に、定年制の対象となる者について希望者全員の65歳までの雇用確保を確実に進めることが急務。


【施策の進め方(ポイント)】

 


希望者全員の65歳までの雇用確保>
希望者全員の65歳までの雇用確保のための方策としては、
 (1)法定定年年齢を65歳まで引き上げる方法
 (2)希望者全員についての65歳までの継続雇用を確保する方法を考える

 

(1)について、報酬比例部分の支給開始年齢の65歳への引上げ完了までには定年年齢が65歳に引き上げられるよう、引き続き議論することが必要。

 

(2)について、継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る現行の基準制度は廃止すべき。また、雇用確保措置の確実な実施を図るため、未実施企業に対する企業名公表など指導のあり方を検討することが必要。

(1)(2)のいずれの方策をとる場合でも、賃金・人事処遇制度について、労使の話し合いにより適切な見直しを行うことが必要。

 




生涯現役社会実現のための環境整備>
生涯現役社会実現のための環境整備として、以下の点を行っていく必要がある。
 (1)高齢期を見据えた職業能力開発及び健康管理の推進等
 (2)高年齢者の多様な雇用・就業機会の確保
 (3)女性の就労促進
 (4)超高齢社会に適合した雇用法制及び社会保障制度の検討